一体、何が目的なのか? 東京・府中市を本拠地にしてフットサルチームなどの活動を行うスポーツクラブ「府中アスレティックFC」(以下、府中FC)のホームページが8日午前、国際テロ組織「イスラム国」にハッキングされた。すでに復旧しているが、日本国内への“直接攻撃”は恐らく今回が初。イスラム国は敵対する米国の大手メディア「ニューズウィーク」やアメリカ中央軍のツイッターなどをこれまで標的にしてきたが…。なぜ府中のフットサルチームを狙ったのか――。

 異変が判明したのは8日午前10時ごろ。府中FCのチーム関係者がホームページの情報を更新しようとアクセスしたところ、画面にイスラム国であることを示す「ISIS」の文字が浮かび上がった。通常、そこには最新の試合結果とスポンサー企業の広告が掲載されているはずだった。


 真っ黒な背景には、白文字で「Hacked by Islamic State(イスラム国がハッキングした)」「We Are Everywhere(私たちはどこにでもいる)」とアピールする文言も…。システムを確認すると、確かに何者かによりハッキングコードが埋め込まれていた。


 復旧にはおよそ3時間かかり、チームはホームページ上で「皆様には多大なるご迷惑とご心配をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」と謝罪。幸いにもサイトの訪問者やサポーター、スポンサーなどの個人情報が外部に流出することはなかった。


 イスラム国といえば、シリアで拘束したジャーナリストの後藤健二さん(47)と湯川遥菜さん(42)の殺害画像を公開し、国際的な非難を浴びたばかり。専門のハッキング集団を有し、敵対する米ニューズウィークや中央軍のツイッター、UAEの日刊紙「イッティハード」「アブダビチャンネル」のサイトにハッキング攻撃を仕掛けてきた。


 対イスラム国を鮮明にする日本も当然狙われる可能性はあったが、なぜ最初の標的が府中FCだったのかは謎だ。米国の重要機関に比べるとマイナー感は否めず、チーム関係者も「全く心当たりがない」「うちを攻撃して何のメリットがあるのか…」と首をかしげるばかりだ。


 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「考えられる理由は2つ。一つは単なる間違い。もう一つは府中FCのライバルチームがイスラム国になりすまし、嫌がらせをしたケースです」と推測。


 可能性が高そうなのは単純ミスの方。井上氏は「府中FCのアドレスが、イスラム国が本来狙っていた団体のものと似ていたのでしょう。例えば、アドレスの『athletic(アスレティック)』がキーワードになっていて、別の超有名スポーツ機関などを狙っていたのかもしれません」と説明する。


 府中FCは開催中の「PUMA CUP2015」の1次ラウンドグループBを首位通過し、13日にペスカドーラ町田と準々決勝を戦う。快進撃を続けているだけに、イスラム国の単純ミスなら迷惑この上ない話だ。