次期日本代表監督の有力候補になっているバヒド・ハリルホジッチ氏(62)に早くも“SOS”が飛んだ。声の主は日本代表選手や技術委員会の面々ではなく、Jリーグクラブの関係者。日本代表を2018年ロシアW杯に導いてもらうのは当然の仕事として、今季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)でいきなり苦戦を強いられているJクラブも救ってほしいというのだ。

 ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチ氏は、コートジボワール代表監督として10年南アフリカW杯出場権を獲得。昨年のブラジルW杯でもアルジェリア代表を16強に導き、母国ではない2つの国の代表チームをW杯に導いた。異国で見せる手腕は折り紙つき。正式に日本代表監督就任が決まれば、ロシアW杯の出場はもちろん、日本が2度はね返された“8強の壁”を突破することも期待できる。

 だが、そんな名将を迎え入れるにあたり、代表チームに選手を供給するJクラブは散々な状態だ。24日に開幕したACLで赤っ恥を連発。柏が敵地で引き分けただけで、昨季3冠のG大阪、2位の浦和、3位の鹿島は揃って黒星発進となった。08年のG大阪以来のACLタイトル奪還に暗雲が垂れ込める展開で、国際舞台での競争力の低さが浮き彫りになった。

 最近の日本代表は欧州組が主力を形成しているとはいえ、Jリーグの強化なくして日本代表の明るい未来はない。それだけに、あるJクラブ関係者は「ACLの結果を知ったら、(ハリルホジッチ氏が)がっかりしてしまうかもしれないが、代表監督になったら、Jリーグとも積極的にコミュニケーションを取ってもらいたい。アドバイスをもらったりしてクラブの強化にも協力してほしい」と熱望する。

 ハリルホジッチ氏はブラジルW杯に臨むにあたり、当時トットナム(イングランド)で出番が少なかった19歳のMFナビル・ベンタレブを代表に抜てきし、本大会でブレークさせた。無名でも国際舞台に強そうな選手を代表招集することで新たな一面を引き出せれば、クラブにとっても大きなプラスとなる。

 ハリルホジッチ氏の大先輩にあたるイビチャ・オシム元日本代表監督(73)は、DF田中マルクス闘莉王ら当時最強を誇った浦和の選手たちの尻を叩き続け、07年ACL制覇の一助となった。ハリルホジッチ氏はどんな形でこれまでのノウハウを日本サッカー界に、つぎ込んでくれるのだろうか。