スペインでの八百長疑惑で告訴が受理された日本代表ハビエル・アギーレ監督(56)が3日、解任された。時間の問題と言われていたものの、就任からわずか半年で監督の座を追われることとなり、日本サッカー界には大きな衝撃が走った。今後の最大の焦点は後任監督人事。J1名古屋で指揮経験のあるドラガン・ストイコビッチ氏(49)や前日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏(61)ら日本に縁のある指揮官の名が挙がっている一方で、意外な大物の名前が浮上している。

 アギーレ監督の解任発表後にJFAハウスで会見した日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長(47)は、後任候補について「今現在Jリーグのクラブと契約をして指揮を執っている監督に声をかけない」との方針を明らかにした。

 緊急事態だけに、まずは日本で指揮経験のある人物に目が向く。その筆頭がストイコビッチ氏だが、2005年に就任したセルビア1部レッドスター会長時代の金銭トラブルが噂されている。協会としてはアギーレ監督の二の舞いだけは避けねばならず、声をかけづらいのが実情だ。

 ザッケローニ前監督や南アフリカW杯で指揮した岡田武史氏(58)らは目指すサッカーの方針がすでに転換されており、かつて磐田を指揮したルイスフェリペ・スコラリ前ブラジル代表監督(66)は3年後を見据えると年齢と高年俸がネック。“日本経験組”は帯に短したすきに長しという状況だ。

 霜田委員長も「日本代表の監督をやりたいと思う良い監督はまだまだ世界にいる」と語っているだけに、欧州で実績のある人物がターゲットとなる。欧州の指導者ライセンスを持ち、各国の事情に精通する関係者は「手腕や日本代表の方向性、人柄を考えると(ルチアーノ)スパレッティ(55)が適任だろうけど、代表経験にこだわるならホセ・アントニオ・カマーチョ(59)あたりも考えられるのでは」と見ている。

 イタリア人のスパレッティ氏はローマなど強豪クラブを率いて高度な戦術が世界的に評価されているが、協会側が選定基準の一つとしている代表監督経験がない。そこで急浮上するのが、スペイン代表やレアル・マドリードなどの監督を歴任してきたカマーチョ氏だ。

 経歴は申し分なく、若手育成や熱血指導にも定評がある。霜田委員長が示すアギーレ流サッカーの継承に関しても、スペインで長年指揮してきた経験から条件に当てはまる。11年に就任した中国代表では800万ドル(約9億4000万円)という破格の報酬だったがこれは中国独特の相場で、同代表での失敗により相場は下落。本人も捲土重来を期すため金額にはこだわらない姿勢だという。

 また、欧州事情に詳しい別のJクラブ関係者は「協会は(ロベルト)ドナドニ(51=パルマ監督)の動向を注視していると聞く。クラブで解任されればすぐに動くのでは」と指摘。ドナドニ監督はセリエAのクラブを歴任したほかイタリア代表も指揮しており、親日家で2010年には日本代表監督候補に挙がったことも。

 最下位に沈むパルマで解任間近とみられており、その際は親交の深いザッケローニ氏のツテを駆使してアタックする可能性がある。

 他にも、ドイツの名将でMF長谷部誠(31=Eフランクフルト)を指導したことでも知られるフェリックス・マガト氏(61)が売り込みをかけているとの情報もある。

 元鹿島監督でパルメイラスで指揮を執るオズワルド・オリベイラ氏(64)も有力視されるが、いずれにしてもザッケローニ氏、アギーレ氏の時と同様、日本にかなりなじみの薄い監督が就任する可能性は高いだけに、同じ失敗を繰り返すことは否定できない。