【オーストラリア・メルボルン発】サッカーのアジアカップ1次リーグD組の最終戦(20日)で日本はヨルダンに2―0で勝って3連勝とし、同組1位で決勝トーナメント進出を決めた。FW本田圭佑(28=ACミラン)が3試合連続となる先制点を決めて、因縁の相手に完勝。審判批判発言で罰金を科されて注目を集めたが、エースは懲りるどころかさらに発言をエスカレートさせた。関係者の間からも“再犯”を予測する声が上がっており、今大会はまだまだ波乱を起こしそうだ。

 準々決勝進出は引き分け以上でOKという条件ながら、敗れれば同時刻キックオフのイラク―パレスチナ戦の結果次第では敗退の可能性もあったなかで迎えた一戦。主導権を握りたかった日本は本田の先制弾で落ち着いて試合を運べた。16日のイラク戦ではポストとクロスバーに合計3回も当て、PKによる1得点にとどまった本田としても、ようやく流れの中からゴールネットを揺らすことができ「いいところにこぼれた。ああいうゴールが増えれば怖い存在になれると思う」と上機嫌だった。

 パレスチナ戦後の審判批判でアジアサッカー連盟(AFC)から今大会最高額の5000ドル(約59万円)の罰金を科された騒動があったばかり。処分に対する反応に注目が集まったが、快勝で終わったこともあり、さすがに審判や処罰に対する発言はなかった。

 だが、それだけで終わる本田ではなかった。審判批判発言の場となった外国人メディアの取材に再び応じ「(次のUAE戦までの試合間隔が)中2日しかない。リカバリーするのに2日では足りない。このスケジュールに納得はできない」と今度は大会の日程に苦言を呈したのだ。

 日本は決勝Tに進出したとはいえ、今後の日程は厳しい。開催国が入るA組の1位突破チームが最も有利な日程なのとは対照的に、D組1位突破チームは決勝まで常に対戦相手より試合間隔が1日短い条件で戦うことを余儀なくされる。19日に試合があったUAEは中3日で日本戦を迎える。

 これだけでも不公平だが、それに加えて中2日の日程が重くのしかかる。国際サッカー連盟(FIFA)は「A代表の国際大会では最低でも中3日の試合間隔をとることが望ましい」としている。中2日と中3日。たかが1日と思われるが、この差は体力の回復において大きいだけに、不利な戦いを強いられる本田は大会への不信感を募らせたわけだ。

 そもそもアジアカップの開催時期が1月ということに対し、日本以外の出場国でも欧州でプレーする選手たちからは不満が出ている。欧州選手権に合わせて6月開催を求める声があるが、AFCは応じない。「欧州選手権と同じ日程にしたら注目度が下がるという空気がある」(AFC関係者)のが最大の理由。選手優先主義でないことも不評の原因だ。

 自分の影響力の大きさを知っている本田にとって、審判批判や今回の日程批判の目的はアジアサッカーのレベル向上。本田に近い関係者は「圭佑は『ジャッジに関してタブーにすることはせず選手から発信するべき』という信念を持っている。もちろん今回も感情的に言ったわけではなく、意図を持っていたはず。処分を受けて波紋が広がればそこでまた議論が生まれる。常にそういう考え方だからね」。

 それだけに「これからも必要とみれば、周りに何を言われても発言はしていくだろうね」と関係者は本田が懲りずに問題提起を続けると予想している。さすがにヨルダン戦は、アジア最優秀審判賞を5回も受賞してW杯の常連にもなっているウズベキスタン人のラフシャン・イルマトフ主審の的確なジャッジもあって審判批判は展開しなかったが、準々決勝以降に再噴火する可能性も否定できない。日本代表の大会2連覇だけでなく、アジアサッカー改革に向けて今度はどんな“本田節”が炸裂するか。