【オーストラリア・メルボルン18日発】八百長疑惑の告発を受理され、厳しい状況に追い込まれている日本代表ハビエル・アギーレ監督(56)に対し、選手からは「支持」を訴える声が続出している。就任当初は不満や懐疑的な意見をぶつけられることが多かった指揮官だが、合宿を続けてきたことで指導法やサッカーへの情熱がチームに浸透。ここへきて“アギーレ信者”が急増しているという。

 八百長疑惑の告発が受理され、日本サッカー協会の大仁邦弥会長(70)がアジアカップ後の続投を明言しなかったことで、アギーレ監督の解任は現実味を帯びてきた。指揮官は「推定無罪」を強調し、身の潔白を主張しているものの、スポンサーやサポーターに対してイメージダウンの懸念はぬぐえず、簡単に流れは変わりそうにない。

 疑惑を抱えたまま大会を迎えたチームは、日本だけではなく海外のメディアからも好奇の目で見られ、試合への影響を問われた選手も少なくない。当然、選手たちにとってはストレスがたまる状況…かと思いきや、実際は「あまり関係ないですね」(MF長谷部)という選手のほうが多い。

 自分たちがプレーした試合での八百長疑惑ならそうはいかないが、今回のアギーレ監督の疑惑は3年半以上も前のスペインリーグでのもの。アジアの頂点に再び立つために、目の前の試合に集中している選手からすれば、今回の騒動は“雑音”にもなっていない。

 むしろ、選手たちは最近、アギーレ監督の指導法に心酔しつつある。「面白い監督だと思う。一緒に練習をしてきて、こんなにサッカーへの情熱がある監督は今までに出会ったことがなかった。この監督についていきたいと思わせてくれる」とある若手選手はアギーレ監督の魅力にとりつかれている。

 MF遠藤保仁(34=G大阪)に言わせると「メリハリをつくっている監督」。アギーレ監督は練習中、意図的に怒り口調で指示を出し、モノを投げつけたりするが、その直後には笑顔で選手のプレーを褒める。また、全体練習の中で一人の選手がミスをして下を向いていると「○○! 顔を上げろ!」と絶叫し、その選手が顔を上げるまで次の指示を出さない。「ああいう怒鳴っている声って、怒られているというよりも鼓舞されているようにしか聞こえない。ドイツの(クラブの)監督はあんな感じなので。だから僕からすれば普通だし、監督はモチベーションを上げるのが上手」とDF酒井高徳(23=シュツットガルト)は納得している。

 アギーレ監督は昨年9月の就任後、なかなか結果が出ないことに加え、日本人選手になじみのない4―3―3システムの導入などで評論家やサポーターから批判を受けることが多かった。そこに八百長疑惑が持ち上がったことで“負のスパイラル”が完成。だがピッチ上に関しては「自由を与えられているし、それに対して注意する監督じゃない」と遠藤は冷静にみている。

 今大会も開幕から危なげない内容で2連勝。チームは日ごとに自信を深めている。「辞めさせないでほしい」という直接的な声こそないが、意外にも選手たちのアギーレ監督に対する信頼は大きい。