【オーストラリア・メルボルン18日発】アジアサッカー連盟(AFC)は日本代表FW本田圭佑(28=ACミラン)に対して5000ドル(約59万円)の罰金を科したと発表した。12日に行われたアジアカップ1次リーグD組初戦のパレスチナ戦後、一部メディアに審判批判を展開したことが制裁の対象となった。本田からすれば覚悟の上での発言だったが、今回の処分には謎と疑問が多数存在。日本代表のエースを取り巻く奇妙な状況とは――。

 本田が口にした一連の審判批判発言は本紙既報通り、やはりAFCの逆鱗に触れた。いくら判定に不満があったとしても、選手や監督が審判を批判するのはご法度。もちろん、本田もそんなことは承知の上での言動だろうが、そのペナルティーは関係者の予想を超えていた。

 今回の件で日本サッカー協会の広報を担当する西沢和剛氏は、AFC側から処分に関する通達があったことを明らかにし、日本協会側の説明を返送したという。本田に協会独自の処分を科すことはないとしたものの、西沢氏は霜田正浩技術委員長(47)とともに本田と話し合い、事情説明と注意喚起を行った。

 とはいえ、日本協会側は「今回の(罰金の)金額は、過去の制裁の例と照らし合わせても大きいのではないか。レギュレーションは順守しますが…」(西沢氏)と困惑を隠せない。AFCは今回、本田同様に審判を批判したイランのカルロス・ケイロス監督(61)にも3000ドル(約35万円)の罰金を科したが、両者の発言内容はそれほど変わらないにもかかわらず2000ドルの差がついた。関係者の間でも「差がつくことは理解に苦しむ」との声がもっぱらだ。

 ただでさえ、この日AFCから発表された処分は29件にも及んだ。11日のバーレーン戦で未承認のユニホームを使用したイラン協会に5000ドルというのはまだしも、イエローカードも罰金の対象になり、イラク戦で警告を受けたMF清武弘嗣(25=ハノーバー)とMF今野泰幸(31=G大阪)にもそれぞれ2000ドル(約24万円)の制裁が科された。AFCは審判を欺く「シミュレーション」の反則や、相手をつかんで止める「ホールディング」、さらに悪質なファウルを取り締まるために今回の罰金制度を定めたもようだが、前代未聞の規定だ。

 そのなかで、個人としては最高額となった本田には「見せしめ」の意味合いも強い。日本協会関係者は「アジアで一番有名な選手から罰金を取るということで、AFCはクリーンな大会を運営しているというイメージを示したいだけ。同じ批判でも、本田じゃなかったらもっと軽い処分だったかもしれない」と分析している。本田が取材エリアで話した内容を知る記者はごく一部だったが、その記者たちがAFC側から事情聴取を受けた事実もない。つまり、AFC側も本田の発言の“ウラ取り”をせずに処分を決めた可能性が高い。

 そもそも、今回徴収する罰金の行き先がどこなのかも不明。大会運営費や審判の給料などに充てられる、といったジョークも現地では広まっている。本田が口にした審判批判は決して褒められたものではないが、AFCの対応もお粗末といわざるを得ない。