「魔球」は復活するのか。アギーレジャパンのエースFW本田圭佑(28=ACミラン)は、代名詞でもある「無回転FK」でのゴールが4年以上もない。あまりの精度の低さに批判が噴出。本田もブレ球を控えていたが、連覇のかかるアジアカップ(来年1月、オーストラリア)が迫ってきたこともあり、ここに来て“封印”を解いた。これには代表イレブンも大歓迎。エースがアジアカップで大爆発するきっかけになるという。

 無回転FKは、高速で蹴り出されたボールがGKの手前で不規則に変化する。野球で言うナックルボールのような軌道を描く「魔球」だ。かねて本田の大きな武器になっており、2010年南アフリカW杯1次リーグのデンマーク戦で鮮やかにゴールを決めた際には日本中を熱狂させた。


 だが、その後の日本代表戦では無回転FKでのゴールはなし。「枠に行かないから無回転は蹴らないほうがいい」という批判の声が出るほどのスランプに陥った。このため、本田も無回転を一時的に“封印”。今夏に開幕したイタリアリーグではカーブをかけたFKにシフトチェンジし、10月4日のキエボ戦では絶妙なFKゴールを決めている。


 そんななか、14日のホンジュラス戦では久しぶりに無回転FKを披露。惜しくも相手GKに阻止されたものの、代名詞復活に満員のスタジアムは大歓声に包まれた。


 日本代表で本田とともにFKキッカーを務めるMF遠藤保仁(34=G大阪)はこう見ている。「久しぶりに蹴っていましたね。ずっとカーブをかけてましたからね。まあ、距離があったので無回転を蹴ったのでしょう。近い距離はカーブで、遠ければ無回転。今後は使い分けていくと思いますよ」


 本田が精度の低い無回転を蹴ることへの批判は完全に消えていない。それでも、遠藤は「いいとか悪いとかはわからないですけど、無回転FKは見た目も派手なので、そこはゴールが決まれば、やっている人(キッカー)は気分が良くなるものですから。僕は蹴らないので、蹴る人の問題ですけど(無回転FKも)いいと思いますよ」と後押しした。


 日本が連覇をかけて臨むアジアカップでカギを握るのは、もちろんチームの要・本田のパフォーマンス。約1か月にわたる大会でエースが気分よくプレーできれば、チーム力は大幅にアップする。逆にエースが不振となると日本は本来の力を発揮できなくなるだろう。


 ベテランの遠藤としては本田がノッていけるように無回転FKの復活を歓迎。FKの精度より、エースに勢いをつけるほうが大事だというのだ。


 幸いにも本田はキックの感覚を取り戻しつつある。アジアカップ本番で無回転を決めることが、アギーレジャパンの連覇につながっていく。