“本田監督代行”だ。サッカー日本代表が、キリンチャレンジカップ・ホンジュラス戦(14日、豊田)に向けて愛知・豊田市内で合宿をスタートさせた。ハビエル・アギーレ監督(55)が私用のためチームを離脱する異常事態となったが、ここぞとばかりに存在感を放ったのがFW本田圭佑(28=ACミラン)。動揺するチームをまとめ上げ、監督顔負けの統率力を発揮しようとしている。

 代表の選手、スタッフが練習前にピッチ中央で円陣を作る。合宿初日の見慣れた光景だが、その輪の中心にいるはずの指揮官の姿がこの日はなかった。

 母国メキシコの殿堂入り表彰式に出席するため、昼にチームが集合してミーティングを行った後、早々にチームを離脱した。出発前に取材に応じたアギーレ監督は「この合宿ではアジアカップに向けたチームづくりをやっていきたい」と意欲を示しながら「私の不在の時もチームの規律を守ってやってほしい」と完全に丸投げ。代表活動期間中に私用で3日以上も監督が不在というのは異例中の異例だ。

 今回の合宿は来年1月のアジアカップを見据えたメンバーを招集し、新チームに初参加する選手も7人を数える。チーム構築のため何よりも監督の手腕が必要とされるにもかかわらず、留守にする姿勢には批判の声が上がっており、選手の間でも疑念が渦巻いている。本田も「珍しいことですね」と複雑な表情を浮かべた。

 下手をすればチームがバラバラになりかねない危機的状況。そこで立ち上がったのが他ならぬ本田だ。代表イレブンの一人が明かす。

「圭佑君は監督ともしっかり話をしていたようだし、ここまでずっと呼ばれ続けてチームの中心としてプレーしている。圭佑君が説明しながら、という状況も出てくるんじゃないか」。表向きはヘッド格のスチュアート・ゲリング・コーチ(41)が練習を指揮するが、その陰でアギーレ流を体得している本田が“監督代行”として辣腕を振るうというのだ。

 本田はアギーレ体制になってからの4試合に皆勤しており、戦術の理解度は誰よりも上だ。先発時は常にゲームキャプテンを任されるなど指揮官からの信頼も厚い。練習の中で細かなプレーや実戦的な動きを選手が確認する際には本田に聞いたほうがスムーズにことが運ぶため、自然と本田が指示を出す場面も増えている。リーダーシップや発信力もあり、監督不在の間は“本田代行”のもとでチームが合宿を進めていくことになりそうだ。

 実際、本田は今まで距離があった一部選手にも宿舎で積極的に語りかける場面が目立ったという。練習後には「監督がいようがいまいが、大事な2試合という位置付けは変わらない。しっかり引き締めて練習に取り組んでいく」と力強く決意表明。これまでかたくなに拒んでいた正式な主将就任にも「今回そういう経験がある選手(長谷部)が帰ってきた状況下で言われるなら、そういう認識を持っていかないといけない」と初めて前向きな姿勢を示した。

“ヤル気スイッチ”が入った本田がいれば、監督不在の懸念も杞憂に終わりそうだ。