日本サッカー協会は16日、21日からカナダに遠征するなでしこジャパンのメンバー21人を発表した。佐々木則夫監督(56)は欧州組を招集して必勝態勢で臨む一方で、大黒柱のMF澤穂希(36=INAC神戸)をまたも外した。実力での落選を強調した指揮官に対し、澤は「宣戦布告」と受け取っているという。2人の対決の構図が色濃くなってきた。

 初優勝を飾った5月のアジアカップ(ベトナム)、連覇を逃した先月のアジア大会(韓国・仁川)はいずれも「若手のテスト」に重点を置いた佐々木監督だが、国際Aマッチデーで欧州組をフル招集できる今回は満を持してベストメンバーを揃えた。21人中17人が銀メダルを獲得した2012年ロンドン五輪メンバー(予備登録を含む)。

 来年のW杯開催国のカナダ女子代表との2連戦(25日=日本時間26日・エドモントン、28日=同29日・バンクーバー)で今の実力を測るとともに、本大会で使用される人工芝対策なども行う予定だ。

 すべては11年ドイツ大会に続くW杯連覇を念頭に置いたシミュレーション。にもかかわらず、佐々木監督は澤の招集を見送った。「ボランチ(守備的MF)2枚という(戦術の)中で、今回は海外組で試したい選手がいる。澤はもちろんいい選手。良いところも悪いところも熟知している。特別扱いしているとは思っていない」と現状での力不足による落選を強調した。

 指揮官はW杯への最終選考のスタートを来春のアルガルベカップ(ポルトガル)と明言。澤にはまだチャンスが残されていることを強調し、澤の象徴といえる背番号「10」を空き番号にする配慮を見せた。

 だが、澤は納得していない。この日、一部で報じられた「メンバー落選なら代表引退を検討」については「現役選手である限り(代表に)呼ばれれば行くし、自ら代表引退とかはない」と否定した。しかも、佐々木監督のやり方に対して「これは(私に対する)宣戦布告だよね」と近い関係者に話している。アジア大会の落選時は「30歳以上非招集」の方針を聞かされていたことで本紙に「悲観的に思わない」と激白しているが、今回は抑えてきた不信感がピークに達した格好だ。

 キャリアの終焉が近いことは理解しているが、アジアカップ準決勝中国戦での芸術的ヘディング弾など結果は出した。澤にはまだ代表で戦う自信もある。

 一方で、W杯連覇に向けて冷静に戦力を見極める指揮官。こじれた2人の関係は簡単に修復しそうにない。