アジア大会サッカー男子準々決勝(28日)、U―21日本代表は韓国に0―1で敗れて2連覇を逃した。2年後のリオデジャネイロ五輪出場を期待されるチームだが、アジアのライバルの前に実力不足を露呈。今後、チーム強化の見直しを迫られるのは必至で、五輪代表の“先輩”で昨季J1得点王のFW大久保嘉人(32=川崎)も厳しいジャッジを下した。

 失点はPKによる1点だったとはいえ、シュート数は3対11。開催国Vを狙う韓国が大会規定通りのU―23代表、しかもオーバーエージ(OA)選手を起用してきたとはいえ、日本は手も足も出ず。一方的に攻め込まれ、自分たちの攻撃は形にならなかった。

 1点を争う展開にもかかわらず、後半終了間際にペナルティーエリア内で主将のMF大島僚太(21=川崎)が不用意なファウルでPKを献上。試合の流れを読む力や危機察知能力の薄さばかりが目立った。責任を痛感した大島は「もっと実力を上げなければならない」と落胆した。

 2年後のリオ五輪を目指すチームにとってはショックが残る内容。大会前は“飛び級”でハビエル・アギーレ監督(55)率いるA代表への招集を期待する声があったが、それどころではない結果で終わった。

 五輪代表の先輩の目も辛辣だ。2004年アテネ五輪に出場し、その後はA代表として10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会とW杯2大会に出場した大久保は「全然(試合が)面白くないから、もう見てない。見る必要もないでしょ」と大会期間中にもかかわらず“無視”。「この中から上(A代表)に行けるヤツもほとんどいないんじゃないの」と辛口コメントを並べた。

 ここまで厳しい言い方をするのは大久保なりの理由がある。過去、五輪世代で活躍しながら、その後は表舞台から消えていった選手を数多く見てきたからだ。「(五輪代表に選出されても)いなくなっている選手は多いでしょ。単にうまくなかったのもいるし、周りがチヤホヤして調子に乗ってダメになったのもいる。俺らの世代でもそうだった」と“身分不相応”な取り上げられ方をされることの弊害を強調している。

 その中で大久保が“消えた選手”とはならずに輝いてきたのは「自分に自信があったから」と言い切る。大久保とともにアテネ五輪に出場したのはDF田中マルクス闘莉王(33=名古屋)やMF阿部勇樹(33=浦和)、MF今野泰幸(31=G大阪)といった個性が強い面々。当時オランダの名門フェイエノールトで活躍していたMF小野伸二(35=札幌)も最後OA枠で加わった。自信を持ち、自己主張なしでは生き残れなかった。

 だが、今回のアジア大会に出場したチームは、関係者から「練習中の声が少ないし、ガツガツしていない。国を背負って試合をする気持ちが伝わってこない」と戦う姿勢を疑問視されていた。1次リーグ・イラク戦で完敗した後に危機感を見せた選手も少数。「自信」と「過信」をはき違えたU―21代表に大久保が厳しい見方をするのも無理はない。

 今後は選手選考や戦術の見直しはもちろん、手倉森誠監督(46)のマネジメント力も問われる。来年3月に始まる五輪アジア1次予選まで、残された時間は少ない。