サッカーのU―21日本代表が初の公式戦となるアジア大会(韓国・仁川)に臨む。2016年リオ五輪出場目指すチームにとって、試金石となる重要な大会。14日には1次リーグ初戦でクウェートと対戦するが、指揮を執る手倉森誠監督(46)が本紙独占インタビューで2回にわたって激白。前編では、意外な“潔癖男子”ぶりを明かした。

 ――自身の性格を分析してください

 手倉森監督:正確(性格?)ですよ。きちょうめんなほうだと思っている。こんな風貌なので大ざっぱな性格に見られますが、細かいですね。しかも、かなりです。何でもピシッとしていないと、いけない気がします。ハンガーの向きやシャツやズボンの折り目までも…。自宅のベッドメーキングもホテルのようにカチッとやりますし、洗濯もやります。家ではふろ、トイレなど水まわりの掃除もします。

 ――水まわりまで

 手倉森:さまざまなことを水に流せるので。仙台の監督時代は試合に負けた時こそ熱心にやってました。隅々までね。洗濯でもたたみ方にこだわりますし、奥さんに対しても注文します。手倉森流があるので。普通は逆? いまでは奥さんが自分のたたみ方に合わせてくれています。

 ――ほかに「自分は細かい」と思う部分は

 手倉森:スケジュールを組むのは好き。手帳に毎日の出来事を細かく書いているし、自分がやることも全部、とにかく書きます。自分が生きてきた証しです。選手に話した内容などもノートに付けています。同じことを言わないためや、矛盾が出ないように始めました。それに人を動かした言葉やダメにした言葉などを見聞きしたら書き留めています。

 ――いつから書き始めたのか

 手倉森:指導者になってからですね。1日も欠かさずに、細かくつけていますよ。実は同じ年で友人のゴン(元日本代表FW中山雅史氏)が以前、1998年フランスW杯に出場するために目標をノートに書いて実現させたことを聞いて、私もやってみようと思ったんです。

 ――なるほど

 手倉森:まずは「40歳までに監督になる」と目標を立て、そのためにやるべきことを書きました。多少時期のズレはありましたが、ほとんど有言実行してきました。サッカー以外で「40歳までに結婚」もできたし、人間の言葉は念ずればかなうんです。大事なのは行動。そうすれば言葉が言霊(ことだま)になる。私は自分の言葉を「ま言霊(誠だま?)」と呼んでいます。

 ――……。ノートや手帳は何冊くらいあるか

 手倉森:実は(五輪を目指す)代表チームの監督になったときに、約10年分くらいのノートを捨てました。過去の練習メニューや戦術などは、サッカーが進化して、もう古いし(ノートに)頼らないで新しいものを生み出さないといけない。そう思ったので。残っているものでも見返すような機会はほとんどない。

 ――影響を受けた指導者は

 手倉森:私は短い間ですが、鹿島にいたので、ジーコ(元日本代表監督)に代表のことやブラジル代表のことを聞いて、現在の仕事にも生かされています。あとは大分時代の小林伸二さん(現J1徳島監督)。細かい部分にもこだわっていた人でしたし、ミーティングでも話術にたけていました。若手育成もうまく、影響は受けています。それにマネジメントも学びました。

 ――具体的には

 手倉森:主にチーム管理、選手管理などですね。仙台時代にその大切さを思い知らされる事件もありました。ピッチ内だけではない人間教育の大切さを知った。そこからはピッチ外のことも選手に対して、細かく言うようになりました。

 ――U―21代表の選手にも厳しく接する

 手倉森:まだ合宿も少ないし、それほどは言っていない。なにより優等生ばかりなんでね。みんなエリートですけど、うまくこなすばかりで主張がない。お互いに意見をぶつけ合うくらいプレーへのこだわりがあってもいい。かつての中田(英寿)とか高原(直泰)のような存在感がほしい。

 ――若い子は自己主張がない

 手倉森:とにかくまじめ。ほかにも(田中マルクス)闘莉王とか中沢(佑二)くらいの存在感が出てこないと国際試合を勝ち抜けない。ブラジルW杯でもザックジャパンを見ましたが、本田(圭佑)くらい自信をもてる選手が出てきてほしい。自分に厳しい選手は常に成長できますから。アジア大会では、何が厳しいのかを知ること。そういう選手が出てくるのを期待してる。そこを表現してもらいながらタイトルを取りにいきたい。

☆てぐらもり・まこと=1967年11月14日生まれ。青森県出身。五戸高で全国高校選手権ベスト8。住友金属(現J1鹿島)サッカー部では、86年に日本ユース代表に選出された。93年にNEC山形(現J2山形)に移籍し、95年に現役引退。指導者に転身し08年にJ2仙台のコーチから監督に昇格した。今年1月にリオ五輪を目指すチームの代表監督に就任。双子の弟・浩氏もサッカー指導者。172センチ、74キロ。