FW岡崎慎司(28=マインツ)が、なんと日本代表のFKキッカーに名乗りを上げた。アギーレジャパン初戦のウルグアイ戦(5日)ではFW本田圭佑(28=ACミラン)がキッカーを務めたが、相変わらず精度を欠き、右利きの選手も人材不足という状況。ブラジルW杯の惨敗からさらなるレベルアップの必要性を痛感する岡崎は、“畑違い”のFKにも果敢に挑戦する覚悟で9日のベネズエラ戦(横浜)に臨む。

 岡崎が現在の胸中を本紙に打ち明けた。

「セットプレーはまだどうなるか分からないけど、自分としてはやっていきたい。これからはFKとかも蹴られれば、と思っている。プレーの幅を広げることは大事なことだし、自分の限界を決めずにやらなきゃいけない」

 これまではダイビングヘッドが代名詞のプレースタイルが示すように、セットプレーでは常にゴール前で合わせる役回り。プレースキックの精度もお世辞にも高いとは言えず、クラブでも代表でもキッカーを務めることはなかった。

 だが、5日のウルグアイ戦で急きょCKキッカーに指名されて大役をこなした。「シュートの感じで入れたりとか自分なりに工夫したし、手応えはあった」と自信をつかみ、今後はFKの練習にも取り組んでいく決意を固めた。

 一大決心の裏にはブラジルW杯の屈辱がある。昨季ドイツで欧州主要リーグの日本人最多得点記録となる15ゴールを挙げエースストライカーとして期待されながら、W杯では1、2戦でシュートゼロ。コロンビア戦でようやく初得点を決めたが、日本は惨敗に終わり「本当に力不足。自分は何もできなかった」と大きな挫折を味わった。

「自分の好きなところに球がくれば仕事ができる。でも、それだけではダメ」。ストライカーとして得点力を磨くためには、今まで自分が取り組んでこなかったことにもチャレンジするべきと思い至ったという。

 チーム事情を考慮した決断でもある。アギーレジャパンでは、ザッケローニ政権時に右利きのキッカー役だったMF遠藤保仁(34=G大阪)やMF清武弘嗣(24=ハノーバー)が選外に。ウルグアイ戦で直接FKを蹴ったエース本田は壁に当てるなど精度の低さは改善されておらず、今後のキッカー役は流動的な状況にある。自らがFKに本気で挑戦すればオプションが増えることはもちろん、本田の危機感をあおって相乗効果も期待できると踏んだのだ。

 一方、ウルグアイ戦が今後に不安を抱かせる内容で、岡崎も“戦術ゼロ”のアギーレ流に戸惑いを隠せなかった。そうした状況だけに、FK挑戦は「自分がチームを引っ張っていく」という決意の表れでもあるだろう。突如、エースに“宣戦布告”した岡崎の右足が、低空飛行で始まったアギーレジャパンを浮上させることができるか。