日本代表ハビエル・アギーレ監督(55)が異例の戦略を打ち出した。初陣となるキリンチャレンジカップ・ウルグアイ戦(5日、札幌)に臨むアギーレジャパンは3日、初めて練習を非公開とし、本格的な戦術トレーニングを行った。そこで指揮官は試合中に何も指示を出さない“ゼロ戦術”の導入を示唆。指揮権の放棄ともなる大胆な作戦だが、そこには意外な狙いがあるという。

 合宿3日目の練習は報道陣に冒頭15分間のみ公開され、その後は約2時間にわたって非公開となった。実戦的なメニューが組まれ、アギーレ監督の指導も熱を帯びた様子。DF長友佑都(27=インテル)は「新鮮でバリエーションが多かったので楽しみ」と話し、初陣に向けて着々と準備を整えている。

 一方で非公開での練習中に、アギーレ監督は驚くべきプランを口にしたという。ある選手によれば「戦術が何もなくても動けるように、ということです。戦術がなかったらどうしようもない、ということがないように。だから、いろいろなポジションができる選手が多くいる」

 つまり新監督はウルグアイ戦でまったく指示を出さないケースがあることを示唆したのだ。サッカーでは戦況に応じ、ベンチの監督から指令を受けた選手が布陣やマークする相手、戦い方を変えていくのが一般的。それだけに異例の方針といえる。

 今回の大胆な試みの狙いはズバリ、選手の適応力を見極めるためだ。6月のブラジルW杯でザックジャパンは、相手国に想定外の動きをされるとなすすべなく受け身となり、失点につながった。この光景は1次リーグ初戦コートジボワール戦、最終戦のコロンビア戦でも見られた。

 W杯を2度経験したアギーレ監督には見すごすことができない日本の修正点で、まずは“放置采配”で選手を試そうというわけだ。

 前出の選手も「僕らも、戦術がなければサッカーができないわけじゃない。選手個人の経験の中でいろいろ染み付いているものがあるから、そういうものを出していけばいいのでは」と話し、戸惑いつつも前向きに受け止めている。

 とはいえ、アルベルト・ザッケローニ前監督(61)は試合でも練習でも細かく指示を出し、忠実に実行することを厳しく求めただけに、アギーレ流はまさに真逆だ。

 規律より柔軟性。イレブンはいきなり突きつけられた難題をクリアできるのか。