ドイツ1部リーグのドルトムントは、ブラジルW杯に出場したMF香川真司(25)をマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)から獲得したと発表した。香川は4年契約で3季ぶりの復帰となる。移籍金は公表されていないが、ドイツのメディアは800万ユーロ(約11億円)と報じた。出番に恵まれなかった英国からMVP級の働きをしたドイツで復活を目指すが、実情はまさに苦渋の決断だった。

 3季ぶりにドルトムント復帰を果たした香川は「クラブを去った日、人生におけるドルトムントでの章は終わっていないとインタビューで話しました。素晴らしいチームとファンのもとに戻れたことは、ただうれしいです。ドルトムントは家族のような存在で、僕のことを忘れずにまた迎え入れてくれたことを誇らしく思っています」と日本語版クラブ公式サイトで喜びのコメントを出した。復帰戦は早ければ13日のフライブルク戦(ホーム)になりそうだ。

 マンUからの放出が決定的となってからは、ドルトムントの他にも昨季スペインリーグを制覇したアトレチコ・マドリードやバレンシア、イタリア王者ユベントスなど、公式、非公式を含めて強豪からの関心が連日伝えられた。香川にとってはさまざまな選択肢があったと思えるが、実際のところ、それほどの“人気”はなかったという。

「真司の評価は全体的に低くなっているのが実情で、どこに行くにしても『控え』の扱いだったようだ。試合に出たいなら、理解者のクロップ(監督)のもとに行くしかなかったんじゃないか」と欧州事情に詳しいJリーグクラブ強化担当者は指摘する。

 昨季は屈辱のシーズン無得点に終わり、W杯でも精彩を欠いた香川の評価は下降の一途。そのため獲得に興味を示したとされる各クラブもリーグ戦ではなくカップ戦要員として考えており、移籍金もかなり値切られていたようだ。

 いまだに恩師のクロップ監督や選手からも高い評価を受けるドルトムント以外は、たとえ移籍したとしてもいずれはマンUと同様の状況に陥る可能性が高かった。古巣には好連係を見せたかつての同僚がおらず、現メンバーとかみ合うかの問題はあるものの、選択肢は古巣しかなかったのだ。

 どうしても“都落ち”の感がぬぐえないが…慣れ親しんだドイツで再び輝きを取り戻せるか。