日本代表の新監督に決定したハビエル・アギーレ氏(55)が“VIP待遇”の撤廃に動きだすことになりそうだ。コンディションを重視した選手起用をモットーとしており、主力といえども本調子でなければ優遇はしない方針。FW本田圭佑(28=ACミラン)、FW香川真司(25=マンチェスター・ユナイテッド)ら特定の選手に甘かったアルベルト・ザッケローニ前監督(61)の手法から大転換が図られる。

 メキシコ代表やスペインのクラブで実績を積み重ねてきたアギーレ氏には、一つの特色がある。

「選手をフラットな目で見るという点は徹底している監督。その時にコンディションがいい選手をどんどん登用するし、その一方で主力やベテランでも調子が悪かったら、ちゅうちょなくメンバーから外すということもする。それは日本代表でも変わらないのでは」とは、中南米のサッカー事情に詳しい在京Jクラブの強化担当者。

 選手の調子を的確に見定めて選考や起用に反映させるのは当然のことだが、その優先順位が高いというわけだ。これは前任者とは正反対。ザック前監督は、お気に入りの本田が故障明けやクラブで出場機会がなく、明らかに調子を落としていても、代表では常に優先して起用を続けた。

 昨シーズンに香川がクラブで出番が激減した際には代表戦で試合勘を取り戻させる方針を取り、MF長谷部誠(30=Eフランクフルト)らも同様だった。

 こうした一部選手を“聖域”とする特別待遇は新たな才能の発掘を妨げる要因になり、選手の間からは「えこひいきではないか」と批判の声が上がることも。そんなザック流がブラジルW杯惨敗を招いたといっても過言ではないだろう。

 だが、アギーレ氏は以前の実績などにとらわれず、状況に応じて最も結果を出せる人材を色眼鏡で見ることなく選ぶ実務派。場合によって、ネームバリューのある選手をバッサリ切り捨てて波紋を呼ぶこともあるが、冷徹なまでの“実力至上主義”が最大の強みだ。

 そうした新指揮官の意向をくんで代表チームは、すでに動きだしている。日本サッカー協会の原博実専務理事(55)は「米国の大会にもスタッフは出している」。プレシーズンマッチながら国際親善大会「ギネス・インターナショナル・チャンピオンズカップ」に参加した本田、香川、DF長友佑都(27=インテル)の状態を詳細にチェックしているという。

 大抜てきもあり得る半面、まさかの主力の代表落ちも…。

 アギーレジャパンのメンバーは戦国模様になりそうだ。