【フロリダ州クリアウオーター3日(日本時間4日)発】不振のエースFW本田圭佑(27=ACミラン)は大丈夫なのか? ブラジルW杯に臨むザックジャパンは国際親善試合コスタリカ戦(2日=同3日)に3―1と勝利。FW香川真司(25=マンチェスター・ユナイテッド)を筆頭に多くの選手が好パフォーマンスを披露した一方で、本田は最後まで調子が上がらずじまい。あまりの低調ぶりにFKキッカー剥奪の可能性が浮上しているほどだ。今後に大きな不安を残す本田の処遇は――。

 期待されたエースの復活は、この日も見られなかった。キプロス戦(5月27日)と同様に動きにキレがなく、ミスを連発し簡単にボールを奪われるシーンも多かった。ゴール前では決定的なチャンスにも反応が遅れ、シュートを打つことさえできなかった。あまりの出来の悪さに本田自身納得できるはずもなく、試合後はぶぜんとした表情で「きつかった」とひと言だけコメントし、ピッチを後にした。

 エースの完全復活なくして、日本の快進撃は考えられないが、アルベルト・ザッケローニ監督(61)は本田との“心中”を決意している。気になる処遇についても、このまま調子が上向かなくても、故障さえしなければ、スタメンを外れる可能性は限りなく低いという。

 とはいえ、大黒柱の不振はW杯の成績に直結するだけに、本田の復活をただ待っているわけにはいかない。そこで検討されているのが、FKキッカーの見直しだ。

 南アフリカW杯以降、代表のFKは本田とMF遠藤保仁(34=G大阪)がキッカーを務めてきた。だが本田が4年間でFKゴールを決めたのは昨年8月のウルグアイ戦のみ。しかも最近はキッカーを独占しながらも、その精度は急下降。キプロス戦では絶好の位置で得たFKを大きく外すなど、目も当てられない状態だ。

 こうした状況にチーム内外から疑問の声が出始めている。日本サッカー協会の幹部は一般論として「FKは貴重な得点機会だから、それは確実に決められる人がいい」と明言。代表イレブンの間でも「他にもいいキッカーはいると思う」と、本田の“聖域”に口を挟む意見が上がっているという。

 また、遠藤は以前から「試合に出ているメンバーや各チームでFKキッカーを務めている選手で話し合ってやりたい」と語っているように、W杯でのFKキッカー交代は日に日に現実味を帯びてきている。本田自身も“悪魔の左足”の異変を気にしており、自らキッカー降板を口にする可能性もありそうだ。

 代役として浮上しているのがMF山口蛍(23=C大阪)だ。かねてキックの精度に定評があり、3月8日のJ1徳島戦では約20メートルのFKを華麗にゴールマウスに突き刺した。同僚のウルグアイ代表FWディエゴ・フォルラン(35)も「本当にいいFK」と絶賛。元日本代表FW森島寛晃氏(42)も「蛍のFKは代表でも大きな武器になる。本田がいて遠藤がいて、そこに割って『オレが蹴る』と言えるメンタリティーも持っている」と太鼓判を押した。山口はキッカーについて「代表ではいいです」と謙遜しながらも、FKについては「つかんできているし、自信もある」とニヤリ。ひそかにその時に備えている。

 W杯本番まで残り1試合(6日=同7日、ザンビア戦)。果たして本田は本来の輝きを取り戻すことはできるのか。もし不振のままなら、その処遇も含め、ザックジャパンは大きな戦術変更も余儀なくされそうだ。