エースと“心中”だ。ブラジルW杯に臨むザックジャパンは、6月2日(日本時間3日)にコスタリカ、6日(同7日)にザンビアと強化試合を行う。決戦ムードの高まるなか、ご意見番の日本サッカー協会の川淵三郎・最高顧問(77)が本紙インタビューに答え、不振のFW本田圭佑(27=ACミラン)を全面的に支持した。その理由とは――。

 ――W杯メンバー23人をどう見ているか

 川淵最高顧問:大久保(嘉人=31、川崎)の選出は予想していなかったが、ゴールへの執念が強いので、勝負どころで力を発揮してくれるだろう。常にゴールを狙っている数少ないタイプなのでチームにも刺激になる。いい選択だったと思う。

 ――高い決定力が期待されている

 川淵:柿谷(曜一朗=24、C大阪)もすばらしい選手だが、スマートというか、ゴール前での泥くささが足りない。大久保は本能というか一瞬のひらめきでやるタイプだから、貴重な存在になるはず。南アフリカW杯のときも自分を捨てて献身的にプレーしていたし、一生懸命さをチームに与えられる。それが大久保の使命だろう。

 ――ところでACミランで苦しみ、キプロス戦(27日)でも精彩を欠いた本田をどう見るか

 川淵:体調はいまひとつみたいだが、まったく心配していない。イタリアでは過大な期待を背負っている感じだが、もともと、そんなにスムーズにはいかないと見ていた。キチンと活躍するのも来シーズンからだと思っていたし(W杯に向けて体の)ケアをしっかりやってくれればいい。

 ――期待値は高い

 川淵:彼は、自分がどうあるべきかをずっと考えているから、プレッシャーをはねのけてやってくれる。本田は四六時中サッカーのことを考えるタイプ。やるべきことはわかっているし、彼が考えて、ベストを尽くして、それでダメなら、もう仕方ない。そのくらい任せられる存在。北京五輪のときから比べると飛躍的に成長したよ。

 ――当時は1次リーグ3戦全敗だった

 川淵:本田はバックパスばかりで、見ていて不愉快になった。それでみんなに「反町(康治監督=当時)はなんであんな選手をスタメンで使うんだ!」と言ったほど。でも、そのあとオランダ(VVV)で悟ったみたい。常に考えているから、目標へのアプローチもうまいし、到達するレベルも高い。考える選手は成長するもの。本田は独特の世界観を持ち、とにかく考えるから一流の選手になれたんだろう。

 ――なるほど

 川淵:香川(真司=25、マンチェスター・ユナイテッド)もそうだけど、いつもサッカーのことを考えているから、インタビューでも的確なことを言える。一流と呼ばれる選手は考えて、考えてサッカーと向き合っている。深く考えるから人生もうまくいく。カズ(三浦知良=47、J2横浜FC)も、サッカーのことを考えているから、道を切り開ける。自分がどう進むのかを自分で判断できるんだ。

 ――香川について

 川淵:彼の試合はすべて見ているし、全部ビデオにとってある。私の考えでは(ウェイン)ルーニー(28)と一緒にプレーするとのびのびやるけど、いないと遠慮している。周りを気にしながらやっている感じ。それに守備のところがちょっと物足りない。積極的に守備もすれば攻撃にもつながる。自分でボールを奪って、そのまま仕掛けるようなプレーがあればもっと試合に出られた。

 ――実戦感覚の面で不安視される

 川淵:逆に考えれば疲労困ぱいでW杯に行くわけではなく、フレッシュでエネルギーも余している。代表では本田もだけど、誰かがやるではなく「自分でやる」くらいの気持ちでやってほしい。

 ――W杯に向けて

 川淵:今回の優勝はブラジルと確信している。日本は初戦(コートジボワール)がすべて。勝つか引き分けるか。勝ち点を取れば上に行けるだろう。決勝トーナメント1回戦でイタリアかイングランドと当たるけど、そこを乗り越えれば十分にベスト4まであるんじゃないか。