サッカー日本代表は27日に埼玉スタジアムで行われた国際親善試合でキプロスに1―0で勝ち、ブラジルW杯前最後の国内試合を締めくくった。29日にキャンプ地の米国フロリダ州タンパへと出発するが、気になるのがエースFW本田圭佑(27=ACミラン)の状態だ。この日のプレーは精彩を欠いたうえに、最大の武器である「左足」の不安も露呈。精度が明らかに落ちており、本来の威力は影を潜めている。“悪魔の左足”に何が起きているのか。舞台裏を探ってみると…。

 ザックジャパンにとってはブラジルW杯メンバー確定後初の実戦。本田はトップ下でフル出場したが、そのプレーは本来のものではなかった。

 前半35分にペナルティーエリア手前右45度の絶好の位置で得たFKで直接狙ったものの、ゴールの枠を大きく外してしまう。後半22分にはゴール前中央で足元にこぼれてきたボールを大きくふかし、観客からはまたもため息が漏れた。CKでもクロスの精度が低く、得意の左足では全くチャンスを生み出せなかった。

 自身のプレーによほど納得がいかなかったのか、普段は口を開く試合後も「アメリカで」と言葉少なに取材エリアを後にした。

 18日にイタリアでのリーグ戦を終えたばかり。代表には遅れて合流しており、コンディションが整っていない面は確かにある。しかし、事態は想像以上に深刻だという。「圭佑はミランでまともにセットプレーを任されていないし、不慣れな右のポジションでこれまでと異なる左足の使い方も求められている。そのあたりを気にする人は多いし、本人も『ちょっとこれまでとは違うかもしれない』と話している」とは、最近本田とコンタクトを取った親しい関係者だ。

 1月に名門ACミランの一員となったが、厳しいレギュラー争いにさらされ、本職のトップ下での出場は激減した。ベンチを温めることも多くなっている状況。最初はFKのキッカー役を強く要求する場面も見られたが、結果を出せないことでそれも次第にできなくなり、セットプレーで蹴る機会も自然となくなっていった。

 そうした状況が4か月半にわたって続いたことで、本田の“伝家の宝刀”の切れ味がすっかり鈍ってしまったというのだ。本田はリーグ戦終了後にミランでのプレーを振り返り「うまくいかなかったことばかり」と吐露したが、その一つが左足の感覚ということだろう。

 また、この2年は満足に休養しておらず、疲労の蓄積もささやかれてきた。この日のキプロス戦後には、アルベルト・ザッケローニ監督(61)も本田について「チームでの出場機会が限られている」と指摘。指揮官もエースが調子を取り戻すまで時間がかかるとみているが…。

 W杯本番までに残された強化試合はわずか2試合。本田のプレーはチームの出来に直結し、日本代表の命運を握っている。悪魔の左足の復活はなるか。