星稜恩師が語った「本田ミランでの格闘」

2014年05月16日 11時00分

2月に本田(右)と対面した石川・星稜高サッカー部の河崎監督

 6月のブラジルW杯日本代表メンバーが発表され、FW本田圭佑(27=ACミラン)に「勝負の時」が迫ってきた。「W杯優勝」を公言する一方で、1月に移籍した新チームでの不振は大きな懸念材料となっている。そんななか、2月にイタリアを訪れて本田と対面した石川・星稜高サッカー部の河崎護監督(54)が本田の“ミランでの真実”を本紙だけに公開。日本のエースが苦しめられた意外な悩みとW杯で活躍するためのポイントとは――。

 本田は2010年南アフリカW杯に続く2大会連続W杯出場となるが、取り巻く環境や置かれた立場は大きく変わった。

 河崎監督:前回のメンバー発表時は、本大会で試合に出してもらえるかどうかもわからない立場だった。でも、今は間違いなく主力としてチームを引っ張っていかなければならない選手。代表チームのスタッフが、いかにして彼に得点を取らせるかということを考え、本人にも周囲にもプラスアルファを求めている。だから、圭佑はその期待に応えなければいけない責任がある。

 だが、1月のミラン移籍後は思うような活躍ができていない。長期の休みも取れておらず疲労が残っているとみられ、W杯への影響も心配されている。河崎監督は2月にミラノを訪問。本田と久しぶりに食事をともにしたが、その席で愛弟子からこんな悩みを打ち明けられたという。

 河崎:彼がミラノに移ってから2か月弱。たわいもない話のほうが多かったけど、その中で「新鮮な野菜がなかなか手に入らない」とか「おいしい肉があまり見つからない」といった食べ物の悩みを話していた。どんな選手でも、新しい土地に行って新しい生活をする時には、そういう面での苦労はある。

 本田にとって「食の悩み」は試合でのパフォーマンスに直結する。不振の原因をそこに求めることができるが、もう一つ避けては通れない問題とも格闘していた。

 河崎:ミランは外国籍の選手が多いチーム。正確な圭佑の言葉ではないけれど「その中でやるのは、想像以上に難しい」といったニュアンスの話もあった。もちろん、プロとして、ミランの選手としてそんなことを言っていてはダメなんだけど。

 その時から約3か月が過ぎた。本田も「言葉の壁」を克服してチームメートとかなりコミュニケーションをとれるようになったと言われている。そういう苦しみを味わったことは、間違いなく日本代表での活動においてプラスになるという。

 河崎:ミランの環境に比べたら、日本代表は楽だよ。日本人同士で気心は知れているし、戦術にしても形ができているわけだから。休みがなくて疲労が蓄積しているという不安もあるけど、こっちに戻ってくればすぐに圭佑はリフレッシュできる。だから私は体力面の心配はしていない。代表合宿は、彼にとってはリフレッシュの場だよ。

 恩師は本田のコンディション面に不安を感じていない。それだけに、これからは自分の仕事に集中すべきだとアドバイスする。

 河崎:勝つために、言うべきことは言ったほうがいい。周りから煙たがられても、大事なことはケンカしてでも伝えないと。ただ、そこで間違えちゃいけないのは、圭佑が「俺がチームをまとめる」と思ってはダメ。キャプテンは長谷部(誠=ニュルンベルク)。ミーティングや全体の意見交換とかチームの調整は長谷部に任せていい。

 本田のW杯での目標は「優勝」。そのためにはどうすればいいのか。

 河崎:もう少しゴール前で攻撃に専念する態勢を作ることに重点を置かないといけない。あらゆるゴールの場面に顔を出し、アシストでも起点でもすべてをまかなうのが圭佑の仕事。どんなに難しい試合だろうと関係ない。圭佑の活躍なくして日本の勝利はないよ。私は楽しみにしている。

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