ピッチ内外で大きな任務を託された大久保

2014年05月14日 08時00分

サプライズ選出に満面の笑みを浮かべた大久保

 元日本代表FW大久保嘉人(31=J1川崎)が「サプライズ」で日本代表メンバーに選出された。ザックジャパンには1度しか呼ばれていないベテランストライカーが、最後の1枠に滑り込み。サプライズの舞台裏に迫ると、複雑な背景が浮かび上がってきた――。

 日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(61)が16人目に「オク~ボ」と名前を読み上げると、会場からどよめきが起こった。海外遠征に向かうバスの車中で選出を知った大久保は「みんながほえたので、一緒にほえました」と興奮を隠せなかった。

 日本代表入りは2012年2月のアイスランド戦以来。ザックジャパンにはこの1試合しか呼ばれていない。それでも土壇場でブラジル切符を手にできた。

 大久保は「Jで結果を出すしかなかったし、点を取り続けてここまできた。そこだけかな」と冷静に分析した。

 昨季はJ1得点王に輝き、今季も日本人トップの8得点。これまでも待望論がありながら、代表復帰は実現しなかった。ザッケローニ監督は「今まで、彼以外の選手を成長させることが大切だと考えていた」と説明。では、なぜベテラン大久保の招集より、MF工藤壮人(24=柏)ら若手育成を優先させたのか。

 在京Jクラブのコーチはこう指摘する。「監督として若手を育てたという実績作りのためだろう。例えば香川なんか、ザックが“育てた”とアピールできる一番の存在だし、次の監督オファーにも影響してくるからね」

 2010年の南アフリカW杯でサポートメンバーだった香川は、ザックジャパンになると世界有数のプレーヤーに成長した。「若手育成」の実績は、各国クラブチームへのアピールになる。つまり、指揮官としてはブラジルW杯後の“就活”の思惑もあって、大久保より若手に目がいっていたのだという。

 だが、最終的には、可能性のある若手を育成できず、W杯を勝ち抜くために「戦力」を選んだ。ザッケローニ監督は「経験があり嗅覚があり、どうすればチャンスが生まれるかよく分かっている選手」と話し、チームの救世主として大きな期待を寄せたが、大久保選出には別の狙いもある。それは不振の香川を再生することだ。

 日本の10番は所属するマンUでノーゴールのまま今シーズンを終えた。その復調は日本代表の躍進には不可欠となるが、大久保と香川はC大阪時代から親交が深い。現在もオフになれば香川が大久保宅を訪れるほど。

 実際、香川は状態が良くないと大久保を頼ってきた。昨年3戦全敗に終わったコンフェデレーションズカップ(ブラジル)では、国際電話でアドバイスを求めている。大久保も「代表に選ばれたら喜んで協力します」と話したように、復活の手助けに異存はない。

 一方、大久保がこれまで代表に選出されなかった理由には、エース本田との相性もあると言われてきた。それでも、もう一人のエース香川の状態の方が深刻で、本田との相性を差し引いても、兄貴分の大久保を呼ぶ必要があったということだろう。

 指揮官からピッチ内外で大きな任務を託された上でのサプライズ選出。大久保が日本躍進のキーマンとなりそうだ。