やはりサプライズはあった。12日、サッカー日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(61)はブラジルW杯に臨むメンバー23人を自身の口で読み上げていったが、FWで真っ先に挙げたのが大久保嘉人(31=川崎)だった。

 指揮官は今回の選考事情について、最後まで悩んだポジションを「ボランチ」(守備的MF)とした。

「ボランチを一枚増やすかどうか。だが、それではFWかDFを一枚削ることになる。たくさんの攻撃的選手を選ぼうと決断した。W杯でも主導権を握るためには、このメンバーしかない」

 その中で“切り札”として期待したのが、今季Jリーグで日本人得点ランクトップの8得点を挙げている大久保だった。

 準備期間に限りがある中で、ザッケローニ監督が重視したのが継続性。「これから詰めていく時間はない。一緒に積み上げてきた選手を選んだ。最近活躍し、いいパフォーマンスをしていた選手はたくさんいるが、一緒に積み上げてきたということを大切にした」

 そんな中で、大久保は唯一の例外だ。ザック体制では2012年2月のアイスランド戦(大阪・長居)での招集しかなく、その試合も結果を残せなかった。最近の調子がよくても、ザッケローニ監督からは“見限られている”という声もあった。

 それでも指揮官は攻撃面で相手に脅威を与えられる昨季のJリーグ得点王に期待を込めた。積み上げてきたものよりも、前回南アW杯16強の原動力になった大久保の経験と、川崎移籍後に格段にアップした得点力にかけた。

 もう一人、悩んだ末の選出となったのがMF青山敏弘(28=広島)だ。「23人に関しては前の段階で頭の中でだいたい固まっていた。でも最後の最後まで考えたいということで、(10日の)広島の試合(対清水)を見に行った」

 今季アジアチャンピオンズリーグを戦い、肉体的にも精神的にも疲弊していた広島の主将は、W杯の過酷な環境に耐えられるのか――。そんなテーマを持って視察した指揮官だったが、青山は十分に期待に応えるパフォーマンスを見せた。そこでザックジャパンの23人は事実上確定した。

 もちろん、メンバー発表はW杯に向けたスタートに過ぎない。「日本代表はクオリティーも高くなり、本番でも日本サッカーが成長しているという証しを残したい」。こう言い切った指揮官とともに、選手たちの挑戦がいよいよ始まる。