サッカー・ブラジルW杯開幕まで残り1か月。12日には日本代表メンバー23人が発表される。ザックジャパンがどんな陣容で臨むのか関心が高まっているが、一方で今後へ向けて気になる情報も。日本サッカー協会と、日本代表オフィシャルサプライヤーを務めるアディダス・ジャパン社の契約延長を巡る交渉が“打ち切り”になったという。協会側はナイキ社やミズノ社など他メーカーとの交渉を解禁する方向。総額240億円にも及ぶ大型契約の行方にも注目が集まる。

 アディダス・ジャパン社は1999年から日本代表オフィシャルサプライヤーとして日本サッカー協会と契約。日本代表のユニホームなどの支援を続け、蜜月関係を築いてきた。2007年4月からは、なでしこジャパンや世代別代表チームにも対象を広げ、15年3月末まで8年間で年間20億円の総額160億円という大型契約を締結した。

 協会側は今年に入り、この契約を23年3月末まで延長するため優先交渉権を持つアディダス社と話し合いを開始。「いろいろなスポンサー契約があるが、まずはアディダスとの契約を春までにまとめたい」と話したものの、交渉の期限となった4月末までに「まとまらなかったということ」(関係者)。

 今回の交渉ではさらに8年間の契約延長を望んでいたが、この間には日本代表が臨む18年ロシアW杯、22年カタールW杯に加え、なでしこジャパンが連覇を狙う15年カナダ女子W杯がある。さらに16年リオ五輪、20年には自国開催となる東京五輪が控える。毎年のように続くビッグイベントに備えて協会側は、プロジェクトチームを発足させた上で、年間30億円で総額240億円規模のさらなる大型契約を求めたようだ。

 ただ、金銭面だけが交渉がまとまらなかった理由ではない。長期に及ぶ契約期間やその他の諸条件面なども含め、両者の間には大きな相違があった模様だ。
 今回の“破談”を受けて協会側は今後、他社との交渉を解禁する予定という。最有力視されるナイキ社を筆頭にミズノ社、アシックス社などの大手を含む複数のメーカーと話し合いを持つ。関係者によると、アディダス社とも再交渉を行う可能性があり、協会側はブラジルW杯が終わるまでに、新契約を完了させたい意向という。

 アディダス社はこれまで15年もの間、サッカー協会と良好な関係を築いてきた。02年日韓W杯では各種レプリカユニホームを100万枚以上も売り上げ、日本代表選手の背番号の決定にも影響力があるとされきた。サッカーファンにも、日本代表のユニホームといえばアディダスというイメージがすっかり定着している。もちろん、6月のブラジルW杯もアディダス社の製品で臨むが、この先、他のメーカーとの新契約に移行することになれば、ビッグイベントにおいては今回が見納めになるかもしれない。

 日本代表オフィシャルサプライヤーになれば、メーカーのイメージアップは当然のこと、莫大な収入も見込める。一方、日本代表の成績が下降し、人気が低迷すれば巨額投資も失敗となりかねない。総額240億円にも及ぶサプライヤーの座を射止めるのはどのメーカーになるのか。ブラジルW杯期間中も舞台裏で激しい攻防がありそうだ。

(金額は推定)