日本サッカー協会は、日本代表候補合宿(7~9日)に臨むメンバー23人を発表。今回は国内組限定の招集でブラジルW杯最終登録メンバー入りの最後のチャンス。昨季Jリーグ新人王FW南野拓実(19=C大阪)ら7人が初選出の一方、待望論の出ていた元日本代表FW大久保嘉人(31=川崎)らは選ばれなかった。アルベルト・ザッケローニ監督(61)が頑固なまでに実力者を招集しない理由は、エースMF本田圭佑(27=ACミラン)の存在にあると指摘されている。

 またもJリーグで実績を残すベテラン勢は選出されなかった。サッカー界から待望論の湧き起こっている昨季Jリーグ得点王の大久保、一昨年の得点王&MVPの同FW佐藤寿人(32=広島)、同DF田中マルクス闘莉王(32=名古屋)も「最後のチャンス」から漏れた。

 日本サッカー協会の原博実専務理事(55=技術委員長兼任)は大久保の選考外について「コンディションはいいとコーチングスタッフ間の認識はある」としながらも「あまり代表に(2012年2月以来)来てないが、彼の力は分かっているということ。そこは監督とも話をした」と理由を説明した。

 ザッケローニ監督が若手選手の見極めを優先したためで、大久保らは構想外ではないという見解だが、5月12日のブラジルW杯メンバー23人発表前、最後の代表合宿に呼ばれなかった事実は重い。W杯の出場は厳しい見通しだ。川崎関係者も「嘉人を呼ばないのは、いろいろ事情があるということでしょう」と不満げに話した。

 結局は実績のある絶好調な選手を最後まで試そうとしなかったわけだが、その理由について、ある日本代表選手の代理人はこう明かした。「今の代表は『本田と香川のチーム』ということ。攻撃陣は本田との相性がいいかどうかが選考の決め手になっている。ハーフナー(マイク=26、フィテッセ)を見ても分かる通り。監督がハーフナーを起用しても、本田がうまく使おうとしないからね」

 昨年10月の欧州遠征(セルビア、ベラルーシ戦)でも象徴する出来事があった。本田はゲーム形式の練習でハーフナーに1回もパスを出さないでいると本番でも“無視”。試合途中にパワープレーのため194センチのハーフナーが投入されても、高さを生かそうとはしなかった。結局、本田の信頼を得られなかった長身FWはその後、代表に呼ばれなくなった。

 また本田と相性が悪いFW前田遼一(32=J2磐田)も招集されなくなった一方で「すべてを兼ね備えている」とFW柿谷曜一朗(24=C大阪)を大絶賛すると、ザッケローニ監督は日本代表で5試合連続ノーゴールと不振でも選出し続けた。このように攻撃陣のメンバー選考に関しては本田の“意向”が強く反映されているようだ。

 大久保は「圭佑とは仲がいいですよ。先輩に気を使ってくれるし。圭佑のトップ下ともうまくやれる自信はありますね」と話していたが、指揮官の判断は違った。ブラジルW杯最終登録メンバー23人の選考も、チームの要となる本田の存在が大きく影響するのは間違いなさそうだ。