「差別横断幕」バイエルンに厳罰

2014年03月25日 16時00分

アーセナル戦でバイエルンサポーターが掲げた横断幕(インターネットから)

 欧州サッカー連盟(UEFA)は24日、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)に対し、差別行為があったとしてホーム戦でスタンドの一部閉鎖と罰金1万ユーロ(約140万円)の制裁を科した。11日に行われた欧州チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦第2戦のアーセナル(イングランド)戦でサポーターが掲げた2種類の横断幕が原因。日本ではJ1浦和が人種差別横断幕を掲示したとして23日にJリーグ史上初の無観客試合処分を受けたばかりだが、欧州サッカーでも悪質な「人種差別」に厳罰が下された形だ。

 ドイツの名門が激震に見舞われた。今回の制裁が適用されるのは、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)を迎える4月9日(日本時間10日)の欧州CL準々決勝第2戦。マンUの遠征メンバーに選ばれれば、日本代表MF香川真司(25)はスタンドの一部にまったく人がいないスタジアムでの試合を経験することになる。

 UEFAが問題視したアーセナル戦のスタンドは、試合前から異様な雰囲気に包まれていた。タチが悪いことに今回の「人種差別横断幕」は1種類ではなく、2種類。どちらも悪質極まりないものだった。

 1つ目は「ゲイのガナーズ(アーセナルの愛称)」という文字と、アーセナルのエンブレムの大砲が裸の男の尻に向けられた絵が描かれているもの。この裸の男がアーセナルのドイツ代表MFメスト・エジル(25)であることは明白だ。

 エジルはドイツ代表の中盤の核となる選手で、2010年南アフリカW杯でも活躍。大会後、ブレーメンからレアル・マドリード(スペイン)に移籍し、今季からアーセナルに戦いの場を移している。欧州を代表する選手の一人に成長したが、トルコ系移民3世という出自から「エジルはいらない」などとドイツ国内ではたびたび差別発言を受けている。また、同性愛者という事実もないだけに、今回の横断幕の悪質さは際立っている。

 もう1種類は、コソボに関する政治的横断幕で「人種差別にNOを コソボにYESを コソボのUEFA加盟を認めよ」というもの。2008年にセルビアからの独立を宣言したコソボは、現在国際サッカー連盟(FIFA)とUEFAに加盟していない。今月5日にはハイチと初の国際親善試合を開催したが、国歌斉唱と国旗掲揚は認められなかった。

 コソボは米国や欧州連合25か国を含む100か国以上に新国家として承認されているが、セルビアやロシアからは認められていない。デリケートな問題だけに賛否両論あるが、FIFAやUEFAは試合中に政治的メッセージを掲出することを禁止しているため、今回の横断幕も処分の対象になった。

 かつて浦和と提携関係を結んでいたバイエルンが今回問題を起こしたのは偶然だろうが、気になるのはその処分内容。日本でも浦和のサポーターが「JAPANESE ONLY」の横断幕を掲げたことが「人種差別」にあたるとされ、無観客試合の制裁を科されたのに対し、バイエルンのスタンド閉鎖は一部(ゴール裏)だけで、罰金も高額ではない。約3億円という浦和の損失には及ばないが、全世界が注目する欧州CLの舞台での制裁だけにイメージダウンなどダメージは大きい。

 欧州では「人種差別」に対して厳しい態度が示されているとはいえ、最近は完全無観客試合の処分を下すケースは少ない。その処分の軽さが抑止力につながらないという見方もある。まだまだサッカー界において人種差別撲滅への道のりは険しそうだ。