日本代表DF長友佑都(27)は欧州ビッグクラブの名門インテル(イタリア)で大きな存在感を発揮している。代表でも不動の左サイドバックとして活躍する長友を陰で支えてきたのがパーソナルトレーナーの木場克己氏(48)だ。長友は6月のブラジルW杯と「世界一のサイドバック」になるため、どう取り組んでいるのか。長友の肉体を支える“相棒”が本紙インタビューで舞台裏を大公開した。

 ――なぜ長友の個人トレーナーに

 木場氏:きっかけは特別指定でFC東京に入ってから(2008年)です。当時ヘルニアを抱え「どうしたらいいですか」と訪ねてきた。そこでインナーマッスルや脇腹の筋肉を鍛えることを提案し、そこからお尻の筋肉を作ったらもっと強い体になるんじゃないかというのがスタートです。

 ――フィジカル力は長友の代名詞。強力なパートナーだ

 木場:そこは本人に聞いてもらわないと(笑い)。佑都は何事にも積極的でしたし、どんどん懐に入ってきた。出会った時は、すごく伸びる選手なのかも、とは思いましたね。実際、自己管理もすごい。自宅には栄養やトレーニング、メンタルに関する書籍が並び、足裏マッサージの本まで。とにかく勉強熱心です。

 ――なでしこジャパンFW大儀見優季(26=チェルシー)も担当する

 木場:オフに一緒にトレーニングすることもありますが、ストイックさでは大儀見さんかな(笑い)。「長友さんに負けたくない」と言うから、砂浜でチューブをつけ、男子と同じ負荷の練習させて…。2人とも意地を張るタイプなので、わざと競わせるようにやることもあります。佑都も負けず嫌いだから100%で取り組む。相乗効果はありますね。

 ――イタリアでプレーする長友と連絡は

 木場:メールと電話ですね。ちょっとでも不安があると、連絡があります。違和感のある患部を写メで送ってきて。そういうやりとりは常にしていますよ。イタリアとは時差があって、彼が落ち着くのは現地の夜になってから。日本では朝4時くらいの時間帯になるんですが、彼のために早起きしています。

 ――どんなテーマで強化に取り組んでいるのか

 木場:基本的に一年一年の目標を設定しています。南アフリカW杯後は「安定」。次のシーズンは「動き出しの一歩」。その次は「軸作り」。今季は「馬力」です。(昨年6月)コンフェデレーションズカップであまり動きがよくなく、フィジカルが足りないと感じたようです。それで馬力をつけるため、インテルに頼んで練習場に坂路を造ってもらった。

 ――専用の急坂を毎日ダッシュしている

 木場:チーム練習の後に居残りでやるんです。チームメートは「まだやっている。もうメシだぞ」とか言っているけど、どんなにきつい練習の後でも欠かさない。世界に行くために足りない部分を、彼は感じているんですよ。自分のウリがフィジカルとわかっているので、手を抜かない。

 ――徹底して取り組む

 木場:彼は自分のやっていることが正しいという自信がある。毎日の体幹練習も欠かさない。イタリアに行った際、インテルの練習場まで同行したら突然「練習○分前だから少し寝る」と車の中で仮眠したんです。その姿を見て、しっかり自分をコントロールできていると感じました。

 ――「世界一のサイドバック」に向け成長する

 木場:23歳くらいのときはガムシャラに走って勢いだけというか。総合的に言うと、この4年間で落ち着きが出ました。年齢を重ね、代表でも確固たる地位を築いたし、自分がチームを引っ張らないといけない立場になったことも自覚している。インテルでも同じだけど、それがピッチでのプレーにも表れている。

 ――ブラジルW杯でも期待できる

 木場:本人は「努力は裏切らない」と言っているので、それが正解かな。昨年は「W杯でメチャクチャ活躍しますから」「自分が活躍する場面がわかる」とまで言うんです。インテルでも活躍しているし、自信があると思いますよ。

 ☆こば・かつみ 1965年12月26日生まれ。鹿児島県出身。学生時代は柔道やレスリングに取り組んだが、ケガで断念。その後は鍼灸師や柔道整復師の資格を取得し、トレーナーに転身した。FC東京でトレーナーを始め、横浜FCメディカルアドバイザー、広島の育成コンディショニングアドバイザーなどを歴任。元日本代表DF宮本恒靖氏、同MF福西崇史氏の個人トレーナーも務めた。