【武田修宏の直言】浦和がJリーグから科された処分は、とてつもなく重いものと感じている。2007年にはアジアチャンピオンズリーグも制覇して「アジアの盟主」となったが、今回の「差別横断幕掲出」の行為は、その栄光にも泥を塗ってしまった。だからこそ残念でならない。

 浦和のサポーターのクラブを愛する気持ちというのは、私がV川崎でプレーしたころから強く感じていた。勝てない試合が続いても選手を叱咤激励し、どうすれば選手をサポートできるかをよく考えていた集団だったというのを覚えている。

 だが、いつの間にかサポーターが選手やクラブよりも力を持つ時代となってしまった。自分たちがチームを支えているという認識が過剰になり、いつしか「サポーターなら何をやってもいい」という風潮さえ生まれた。

 私が一時プレーしていたパラグアイでは差別発言なんて一切なかった。ブラジルを含め、南米ではいいプレーにはファンが選手に拍手を送り、ふがいない内容には容赦なくブーイングを浴びせる。これこそが選手をサポートする純粋な行動のはずだ。

 選手は毎試合勝利をつかむために、必死でプレーしている。そういう思いをピッチ外の騒動でかき消されてしまうのは、選手が気の毒でならない。浦和は今回の件で失った信用を一刻も早く回復してほしい。

☆武田修宏:たけだ のぶひろ=1967年5月10日生まれ。静岡県出身。幼少期から「天才少年」と呼ばれたストライカー。名門・清水東(静岡)から86年に読売クラブ(現東京V)入り。ルーキーながら11得点を上げ、リーグVに貢献し、MVPにも選出された。Jリーグ発足後はV川崎や磐田、京都、千葉などでプレー。00年には南米パラグアイのルケーニョに移籍。01年に東京Vに復帰し、同シーズンで現役引退した。Jリーグ通算は94得点。JSL時代も含めれば152得点を挙げた。87年に日本代表に選出。93年アメリカW杯アジア最終予選でドーハの悲劇を経験した。

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