エースの“スパルタ指導”が過激さを増している。日本サッカー協会は2月27日、国際親善試合ニュージーランド戦(3月5日、国立)に臨む日本代表メンバー23人を発表した。ブラジルW杯に向け本格始動するザックジャパンでは、MF本田圭佑(27=ACミラン)がチームメートに厳しい“指導”を繰り返しているという。しかも「日本の10番」にまで苦言を呈していたことが判明するなど、エースの言動が波紋を広げている。

 記者会見に臨んだアルベルト・ザッケローニ監督(60)は「3年間、積み上げたものの再確認をしたい。ここから本当のラストスパート。選手たちの競争に期待している。W杯に行くメンバーで、誰も約束されているポジションの選手はいない」と強調した。

 昨年11月以来の代表招集で、W杯メンバーの発表前、最後の試合。イレブン全員が顔を合わせるのは約1日半しかない。限られた時間で、戦術や連係を確認したうえで、アピールも欠かせない試合となるが、チームの最大関心事はエース本田の存在にあるという。

 昨年11月、ブラジルW杯に向けた取り組みを問われた本田は「やれることをやるだけ。しっかり自分たちが所属クラブに戻って、チームとして、そして個人として課題に取り組むこと」とイレブンに強い口調でレベルアップを求めていたが、最近は激しさを増しているという。

 W杯出場を決めた昨年6月の報告会見では、壇上から選手個々の課題を細かく指摘し、注意したように、代表活動中は小言を連発するという。実際、昨年の代表合宿中には、イレブンを一喝する出来事があった。ある主力選手は「食事会場で(MF香川)真司(24=マンチェスター・ユナイテッド)や今ちゃん(DF今野泰幸=31、G大阪)がラーメンとかを真っ先に食べようとするんで、圭佑は『まずサラダから食べるように!』って言うんですよ。そういうところまでしっかり見ているというか、細かいことなんですけど意識の高さというのはありますよね…」。

 本田の指摘はプロアスリートとして当然のこと。一流選手に対して言うのははばかられることだが、本田は食事への強いこだわりは体づくりやコンディション維持のために、プレーと同じように大切なものと位置づけている。そこで一切の妥協を許さない姿勢を、日本の10番を背負う香川や大先輩の今野にも容赦なく求めたという。

 イレブンにとって合宿中の食事は楽しみで安らぎの時間。つい好きなメニューから手を付けてしまう場面もある。それでもプロとして気を配っていないわけではない。実際にトレーナーは「楽しくストレスをためない食事も大切」という。このためエースの厳し過ぎる指摘はチーム内で賛否両論を呼んだようだ。

 その本田は昨年12月にイタリアの名門ACミランへ移籍し「10番」を背負うなど、存在感もアップ。ザックジャパン内でさらに大きな発言力を手にした。公言する「W杯優勝」を有言実行するため、今回もイレブンへの苦言が過激化しそうだ。