【イタリア・ミラノ19日(日本時間20日)発】本田がミランの歴史を変えた。イタリア・セリエA第20節が行われ、ACミランの日本代表MF本田圭佑(27)はホームのベローナ戦でリーグ戦初先発出場。この試合が初采配となったクラレンス・セードルフ新監督(37)は、日本代表と同じシステムを採用して本田をトップ下に置くサプライズを見せた。本田は後半18分でベンチに下がったが、試合は1―0でミランの勝利。名門クラブの伝統をも動かした本田が確固たる地位を築き始めた。


 冷たい雨が降りしきるホームのジュゼッペ・メアッツァ(通称サンシーロ)。これが公式戦デビュー3戦目となる本田は、リーグ戦では初先発とは思えないほど貫禄を漂わせながらピッチに立っていた。


 本田にとって「背番号10」の先輩にあたるセードルフ監督はこの試合が初采配。本田の起用法に注目が集まったが、そこにサプライズが用意されていた。指揮官が採用したシステムは4―2―3―1。攻撃陣は1トップにFWバロテッリ、2列目の中央に本田、右のMFカカ(31)、左のMFロビーニョ(29)を並べた。


 ミランといえば「クリスマスツリー」と呼ばれる「4―3―2―1」の布陣が伝統的に採用されてきた。本田もデビュー戦となった12日のサッスオロ戦、初ゴールを決めた15日のイタリア杯スペツィア戦はともに伝統布陣の2列目の右に配置された。だが、初陣の指揮官は自身が現役時代に経験したことのないシステムをあえて選択。日本代表で慣れ親しんだシステムを採用することで本田にやりやすい環境を与えた形だ。


 ミランの入団会見で希望ポジションを聞かれた際に「どのポジションでもできるが、もし選べるならトップ下です。これが一番得意なポジション」と話していた本田は縦横無尽にピッチをかけまわった。


 前半8分には右に流れた位置から、中央で待ち構えたカカの頭に絶妙なクロス。惜しくも初アシストとはならなかったが、カカは「ナイスパス」と言わんばかりに本田に左手親指を立てて合図した。


 また前半13分には、ゴールから右寄りの位置でFKを得ると、ロビーニョをおとりにして本田が悪魔の左足を振り抜いた。力んでしまったのか、ボールはゴールの枠を大きく越えてしまったが、FKキッカーとしてもイレブンから認められつつある証拠だ。


 その後も本田は、カカとのワンツーで中央突破を図るなど、チームメートとの好連係を随所に見せた。後半11分には、ピッチ中央にドリブルで持ち込むとゴール30メートルの位置から左足シュート。これは枠の右にそれ、15日のスペツィア戦に続く2戦連続弾はならなかったが、攻撃の起点として存在感を発揮した。


 本田は後半18分、ミラニスタから惜しまれるようにベンチに下がったが、交代後もミランは、カカがトップ下に入る形で同システムを継続。後半37分にはカカが倒され得たPKを、バロテッリが決めて均衡を打ち破った。ベンチの本田もロビーニョと肩を組んで大喜びだった。


 初采配を白星で飾ったセードルフ監督の本田トップ下起用は、本田中心のチーム作りをするという意思表示にほかならない。本田にとっても、日本代表と同じポジションでプレーできるのは、ブラジルW杯に向けても大きなアドバンテージになる。わずか3試合で伝統のチームに変革をもたらした本田はさらなる飛躍を遂げそうだ。