目指すところが輝いていないと、子供たちは本気にならない

2020年07月15日 11時00分

子供にも人気があったもなでしこジャパンの前監督・佐々木則夫氏(左)

【なでしこリーグ歴代最182点 大野忍 ひとりごと】ようやくJリーグが再開となり、遅ればせながらなでしこリーグも18日に開幕を迎えます。サッカーがある風景が戻りつつあるのをうれしく思いますし、個人的には無観客で行われていたときのJ1の試合で、普段は大声援にかき消されている音や選手の声が聞けたのが非常に興味深かったです。男子のトップ選手が試合中にどんな声を出しているのか、指導者の立場としては勉強になりました。こんな環境も楽しめたと思います。

 一方で、本業の指導のほうですが、こちらは厳しい状況が続き、楽しめるというところに至っていません。一番の問題は練習場の確保です。私が指導しているINAC神戸の東京支部育成組織「INAC東京・多摩川」は練習拠点が決まっているわけではありません。小学校の校庭をお借りすることが多いのですが、今はコロナの影響で学校も一日の授業時間が多く、校庭が開放される時刻も遅くなっています。そうなると練習開始時間もずれこみ、満足なメニューが消化できません。

 校庭が使えない場合は他の練習場を探す必要がありますが、東京には他のクラブチームや社会人チームも多く、日によって練習場所が変わる“渡り鳥”のような生活です。週末に練習試合をやりたくても、グラウンドがないためにできないということもあり、子供たちには申し訳ない思いもあります。

 先日、女子サッカーのプロ化がニュースになりました。競技の発展、強化という部分では魅力的な話ですが、こうした育成年代のサポートをどう考えているのかを聞きたいです。競技人口を増やしましょう、という政策だけではあまりにも無責任な気がします。女子W杯招致断念の件にしても同じです。もしW杯を開催したら、それを見た子供はサッカーをやりたくなるはずじゃないですか。でも、練習環境が整っていない。これでは宝の持ち腐れです。

 コーチの私から見て、今は本当に上手な子が多いです。でも、トップチームで活躍したいとか、代表に入りたいという思いを持った子が少ないのも事実です。サッカーと勉強を両立したいという子も増えました。こういう時代ですから、それもわかります。ですが、なでしこリーグやなでしこジャパンの魅力が薄れてきていることとも無関係ではないでしょう。

 目指すところが輝いてくれないと、子供たちは本気になりません。だからこそ、ようやく開幕する今季のなでしこリーグでプレーする選手の責任は大きいです。選手には「いいプレーをしてよ」「がっかりさせんなよ」と言いたい。開幕戦は私なりの厳しい目線でしっかりチェックしていきたいと思います。(元日本代表FW)