日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長(62)が新型コロナウイルスに感染した影響が、急激な広がりを見せている。同会長が視察したサッカー女子の国際親善大会シービリーブスカップ(米国)で、なでしこジャパンと対戦した米国代表が即座に反応。さらに緊急対応に動くJクラブが現れ、各方面にショックが走った。

 サッカー界に不安が広がっている。トップのウイルス感染発覚を受けて日本サッカー協会側は対応に追われた。「保健所や関係当局の指導に従って」と都内にあるJFAハウスを閉館し、今後に消毒作業などを行っていくことを決定。出入り口には「臨時休館」と書かれた張り紙が出された。

 田嶋会長はフロリダ州オーランドで5日(日本時間6日)に行われたなでしこジャパンのスペイン戦を視察。同日の同会場で米国―イングランド戦も行われたことから、現地メディアをはじめ米国女子代表の感染を心配する声が殺到した。協会によると、同代表の広報担当者から「今回、日本協会の会長と米国女子代表の選手、監督、スタッフとの交流はなかったと考えている。現在のところ症状が見られる者もなく家に帰っている。メディカルスタッフが選手や関係者と連絡を取りながら、きっちりと状況を見極めていく」との連絡があったという。

 田嶋会長との接触が不安視されるなでしこジャパンについては「全員検査」の声も出ているが(本紙昨報)、呼吸器疾患や発熱などの症状が出ないと新型コロナウイルスの検査を受けられないとあって現時点では静観の構え。今回の米国遠征に最多の9人を送り込んだ日テレ・ベレーザも「今回の田嶋会長の件を受けて何か対応を変えたことはありません。引き続き、手洗いの徹底など感染の予防策に努めている」とし、当面は状況の推移を注視していく方針だ。

 一方で、田嶋会長の感染を受けて緊急対策を取ったJクラブもある。J1FC東京は、メディア公開日を前に報道陣へ異例の対応を実施。田嶋会長が最後に取材対応した「12日の囲み取材に行かれた方」「別途田嶋会長と接触のあった方」、Jリーグ理事会の会見が行われた17日に「JFAハウスに出入りした方」を対象として「来場をご遠慮ください」との通達を出したのだ。これまでメディアの取材を認めていた川崎も、18日以降は無期限で取材禁止とする方針に転じた。

 サッカー界以外でも動きが出た。埼玉県は田嶋会長と会議で同席したとして、飯島寛副知事が23日まで出勤を自粛するという。症状は出ておらず、検査の予定はない。大野元裕知事(56)は記者団に「念のための措置」と強調したが、各方面で深刻ムードが強まっている。