名門復活の裏にあったものとは――。全国高校サッカー選手権決勝(13日、埼玉スタジアム)は、静岡学園が3―2で前年度優勝の青森山田に逆転勝ちし、単独では初となる24大会ぶり2度目の全国制覇を果たした。伝統の「静学スタイル」を貫いたが、高いテクニックを習得するためのマル秘練習と、強豪校をつくり上げてきたOBからの“猛ゲキ”が悲願の日本一を引き寄せた。

 序盤に2点を先行される苦しい展開を強いられながら、猛反撃で3点を奪って前年度覇者の青森山田を撃破。1995年度大会で初優勝したときは鹿児島実と両校優勝だったため、悲願の単独Vに静岡学園の川口修監督(46)は「この優勝をキッカケに静岡県ももっと盛り上がっていける」と“サッカー王国”の復権を高らかに宣言した。

 ドリブルやパスワークを中心とした個人技の高さを武器に、スペイン1部の名門バルセロナをほうふつとさせる「静学スタイル」で今大会を席巻したが、その礎となったのが“細かすぎるリフティング”だ。

「ボールタッチを上達させるために、他のチームがやらないような練習をやっている」と話した2年生のGK野知滉平(17)はこう続ける。「かかとだったり頭とか体の全部を使って、普通じゃやらないリフティングをやったりしている」

 体のあらゆる部位を使ってボールを巧みにさばける技術を日々のリフティングで徹底的に叩き込む。さらに全身でボールを扱うことで体のバランスも養うことができ、高校年代では圧倒的な個人技を身につけることができたのだ。

 技術だけではない。MF浅倉廉(18)によると「試合前日のミーティングで、スペシャルメッセージとして大島(僚太=26、川崎)さんや長谷川(竜也=25、同)さん、鹿島の伊東(幸敏=26)さん、C大阪の木本(恭生=26)さんとかいろんな人からメッセージをもらった。『決勝は命をかけてやったほうがいい』というセリフもあったので、すごくモチベーションになった」という。

 多くのJリーガーを輩出してきた名門校のOBからのサプライズメッセージ。偉大な先輩から届いた数々の熱い言葉にイレブンも奮い立った。慣れない大観衆の中で、窮地に追い込まれるとなかなか本来のプレーを発揮できるものではないが、OBからの激励を胸に最後まで諦めず逆転劇を呼び込んだのだ。

 2得点で立役者となったDF中谷颯辰(そうしん=18)は「王国復活の一歩目を踏み出せた」と誇ったが、伝統のスタイルを貫いた静学が黄金時代を築くはずだ。