元ヤングなでしこ・井口祥容疑者も「詐欺受け子」のナゼ 気軽に犯罪へ至る2つのルート

2019年11月05日 16時30分

逮捕された井口容疑者。澤穂希さん(手前)とチームメートだったことも

 全国で被害がやむ気配がない振り込め詐欺などの特殊詐欺で、サッカー女子のU-19日本代表やなでしこリーグで活躍した元選手や警察交通機動隊の巡査や消防士が被害者から金品を受け取る「受け子」として逮捕され、衝撃が広がっている。日の丸を背負った元代表選手や現職の公務員が、なぜバイト感覚で特殊詐欺に手を出してしまうのか。

 埼玉県警が4日までに詐欺未遂の疑いで逮捕したのは、東京都世田谷区の会社員井口祥容疑者(27)。氏名不詳者と共謀して、今月1日に数回、警察官を名乗り、さいたま市の無職男性(77)方に「あなたのキャッシュカードが偽造されている。新しい物にする必要がある。これから取りに行く」などと電話し、カードをだまし取ろうとした疑い。認否は明らかにされていないが、警察は特殊詐欺で金品を受け取る「受け子」役だとみている。井口容疑者は元女子サッカー選手で、なでしこリーグのINAC神戸やジェフ千葉レディースに所属。2011年には“ヤングなでしこ”ことU―19日本代表にも選出されるなど、将来を嘱望されていた。

 ただ、ケガなどもあって千葉に所属した14年シーズン後に現役を引退。当時、自身のインスタグラムに第2の人生では芸能界に進むことを書き込んでいた。その後、同容疑者は芸能人として表舞台に立つことはなかったが、思わぬ形でクローズアップされた。今年に入ってテレビ東京系の人気番組「家、ついて行ってイイですか?」に出演していたからだ。

 元サッカー選手ということに加えて番組内では、同性愛者であることをカミングアウト。さらに妻(パートナー)がいることも告白した。現在は不動産会社に勤務しており「パートナーシップ制度」のある世田谷区に在住しているという。

 来年の正月には両親に“結婚”の報告をする予定と話していた。日の丸を背負って戦ったこともある元選手が特殊詐欺グループの一員に身をやつすとは全く笑えない。

 笑えないといえば、先月末にも神奈川県警第1交通機動隊の巡査蕪木(かぶらぎ)紀哉容疑者(24)が同じく「受け子」を務めて逮捕された。横須賀市の80代男性宅に共犯者が電話して、これから警察官が自宅を訪れる旨を伝えた。実際にやってきたのが本物の警察官の蕪木容疑者で、男性からクレジットカード2枚を盗んだ疑い。容疑を認めている。

 他にも東京消防庁消防副士長の中崎慶二郎被告(24)も70代女性からキャッシュカードをだまし取ろうとしたとして先月末、詐欺未遂罪で逮捕され、窃盗未遂罪で起訴されている。

 スポーツ選手や公僕がなぜ特殊詐欺の受け子に走るのか。詐欺に詳しい事情通は「薬物に手を出すのと同程度か、それ以上に気軽に特殊詐欺の仕事が見つかる時代だからです」と話す。

 これらの詐欺に関するルートは主に2つある。

「まず知人・友人経由。『稼げる仕事あるけどやらない?』と持ち掛けられるか、『稼げる仕事ある?』と自ら聞いて仕事をもらう。2つ目はネット経由。掲示板などの書き込みに反応して、指示役の1人と知り合うか、ネットの求人サイトで応募する。ネット経由の場合は、オレオレ詐欺とわからないような記載がされているんです」(同)

 ネット求人情報に乗っかって、いざ仕事を請け負うと高収入を約束され「さすがにおかしい。ヤバい仕事だ」と誰もが感じるというが…。

「お金に困っているので、わかっていてもそこで引き返すことはできない。しかも、最初に成功してしまえば、楽に稼げるのでズルズルと続けてしまう」(同)

 井口容疑者は複数のスマホを所持する男と一緒にいたところを警察官に怪しまれ、職務質問から御用となった。男も受け子とみられ、同じく詐欺未遂で逮捕された。バレたときのリスクは大きい。今回逮捕された人たちは、信用も仕事も失った。