全国高校サッカー選手権決勝は14日、埼玉スタジアムで行われ、青森山田が流通経大柏(千葉)に3―1で勝利し、2大会ぶり2度目の優勝を飾った。10番を背負うMF檀崎竜孔(3年)が、J1札幌内定の実力を発揮し2得点の活躍を見せ、全国制覇に貢献した。その裏には名将・黒田剛監督(48)がエースの力を最大限に引き出すために実行した“岡ちゃん流”の名采配があった。

 2度目の全国制覇に導いたのは檀崎だった。1―0の前半40分に同点弾を決めると、後半18分には勝ち越しゴールを叩き込んだ。43分に“スーパーサブ”FW小松慧(3年)の加点で、リードを広げ、そのまま見事に優勝を勝ち取った。自らの役割をきっちりこなしたエースは試合後に涙を浮かべて歓喜した。

 2年前の決勝も後半途中から出場しており、1年時に続きピッチ上で選手権Vを体感した10番は「2度目の優勝はとてもうれしい。みんながつないでくれたおかげ。本当に苦しい、つらい思いをしてきた6年間だったけど、仲間と乗り越えられた。仲間に感謝したい」と語った。

 大会得点王に1ゴール及ばなかったものの、チームトップの4得点で攻撃をけん引。持てる力を最大限に引き出した裏には指揮官のある決断があった。16強入りした2010年南アフリカW杯で日本を率いた岡田武史監督が大会直前に、DF中沢佑二氏からMF長谷部誠に主将を変更したように、今大会前に檀崎からGK飯田雅浩(3年)へと主将を交代させたのだ。

 黒田監督は14年に青森を訪れた岡田氏から、指揮官の心構えなどについて指導を受けたことがある。中でも「最終的には自分を信じられるかどうかなんだ」という言葉に感銘を受けたという。今回の決断も岡田氏がW杯決勝トーナメント進出のために実行した“名采配”の影響もあったと言えそうだ。

 もちろん、キャプテンを代えることにはリスクが伴う。それでもまとめ役を担っていたエースの負担を軽減し、ピッチ上のパフォーマンスに集中させる――これが2度目の全国制覇への戦略だった。その期待に応えた檀崎は「チームを引っ張るという意味では、やることは変わらないので影響はなかった」と笑顔で語った。

 今春からJ1札幌で新たな挑戦をスタートさせることに「しっかりと土台をつくりたい。開幕スタメンを狙ってがむしゃらにやっていきたいし、日本代表も目指していきたい」。2度の全国制覇という大きな経験を生かし、プロの世界でさらなる飛躍を目指す。