【UAE・アブダビ発】ロシアW杯のヒーローが“名脇役”を宣言した。アジアカップ1次リーグF組初戦のトルクメニスタン戦(9日)に向けて練習を行った日本は、故障離脱したMF中島翔哉(24=ポルティモネンセ)に代わってMF乾貴士(30=ベティス)が合流。W杯16強進出の立役者の代表復帰でアジア王座奪還に向けて周囲の期待も高まるが、乾本人は意外な覚悟を口にした。

 ついにあの男が代表に帰ってきた。W杯で16強入りした西野ジャパンでチームトップの2得点を挙げた乾が森保ジャパンに初招集。右ふくらはぎ痛で離脱した中島に代わる追加招集ながらも、DF長友佑都(32=ガラタサライ)が「みんながざわつくようなものを持っている」と語ったように、チーム内外でその存在感は一際大きい。

 今大会も当然大黒柱としてド派手なパフォーマンスにいやが応でも期待が高まるが、この日の練習後、本人は自らの“立ち位置”について持論を展開した。
「どういう選手とやっても合わせていける、周りを生かしていけるのが自分の特徴」とし「(MF南野)拓実(23=ザルツブルク)や(MF堂安)律(20=フローニンゲン)が点を取って乗っていければいい。そのなかでいい連係やっていければ。自分たちはサポートしていかないといけない」

 森保ジャパンで赤丸急上昇中の若手コンビを前面に出し、自らは黒子役に徹する覚悟を宣言。W杯で世界を驚かせるプレーを見せたことでアジア各国が乾を警戒しているのは明らかだが「追加招集なので、そんなに意識していないんじゃないか」とまるでどこ吹く風だ。

 たしかに今季は所属クラブ出場機会を思うように確保できず、森保ジャパンでは中島やMF原口元気(27=ハノーバー)の後塵を拝し、昨夏以降は日の丸を背負うことはなかった。乾が「左サイドには元気も翔哉もいたので、難しいかなとは思っていた」と口にしたのも偽らざる本音。現状では森保ジャパンで自らが主役になるというのはふさわしくないとの思いがあるのだろう。

 だが“脇役宣言”の裏には、独自の冷静な分析もある。「若いチームなので、まずは勢いに乗ることが大事。前々回(日本が優勝した2011年カタール大会)に似ているんじゃないか。勝ち方、点の取り方次第でどんどんよくなっていく。そうなれば優勝できる。チームにとってどの勝ち方が一番いいのか考えると、僕はそれが一番日本のためにいいと思う」

 優勝するための起爆剤として必要なのは、森保ジャパンの新エース候補で5戦4発の南野と、2020年東京五輪エース候補の堂安というわけだ。2大会ぶり5度目のアジア制覇のため、乾は喜んで若手の引き立て役を買って出る。