9日に埼玉スタジアムで行われた天皇杯決勝はJ1浦和がJ1仙台を1―0で下し、12大会ぶり7度目の優勝を飾った。苦しい船出となった今季だったが、タイトル奪取で来季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権も獲得という大団円で幕を閉じた。

 かつて鹿島でJ13連覇を成し遂げた名将の手腕が、沈みかけていた名門をよみがえらせた。今季の浦和は開幕から低迷し、17位まで落ちた4月上旬に堀孝史前監督(51)を更迭。後を継いだオズワルド・オリベイラ監督(68)は大胆な手法でチーム再建を果たした。

「リーグ戦の真ん中くらいに目標が天皇杯を取ることに定まった」と槙野智章(31)が振り返るように、早々にリーグ戦のタイトルを諦めて天皇杯奪取に照準を設定。選手のモチベーションを高め、戦いやすい環境を整えた。

 そして目標を実現するべく次々と改革を断行。「試合への持っていき方、サッカーのために生きるという考え方。浦和に足りなかったものが植えつけられた」とDF岩波拓也(24)。まずは勝者のメンタリティーをチームに浸透させた。

 練習も“スパルタ化”。「単純に練習量が多い。だから自然と走る力がついた」とMF青木拓矢(29)が苦笑いを浮かべるほど選手に厳しい練習を課した。さらにメスを入れたのがセットプレー。これまで浦和はセットプレー練習には消極的だったが「ただ練習するだけでなく、選手一人ひとりの細かい動きまでやる」(MF宇賀神友弥=30)と徹底したトレーニングで成果を出した。

 鹿島の黄金期を取り戻し、最大のライバルだった浦和も立て直した“オズの魔法”。来季はさらに輝きを放つはずだ。