サッカー日本代表MF本田圭佑(32)が12日、カンボジア代表の「実質的な監督」となるGMに就任することを正式発表した。オーストラリア1部(Aリーグ)メルボルン・ビクトリー入りする現役選手でありながら他国代表を指揮するのは極めて異例だ。日の丸を背負って2020年東京五輪を目指すことを宣言した本田の“怪行動”に日本サッカー界でも大きな波紋が広がっている。

 カンボジアの首都プノンペンで記者会見した本田は「立ち位置は『実質的な監督』ということになる。契約期間は2年」と説明。今後は同代表戦でベンチ入りし、陣頭指揮を執るという。初陣は9月10日のマレーシア戦になる予定で「カンボジアのサッカースタイルをつくる。カンボジアの魅力を世界に伝える」と力を込めた。

 メルボルンVの一員として現役を続けながらカンボジア代表チームを指導する異例の挑戦には疑問の声も出ている。元日本代表FW武田修宏氏(51=本紙評論家)は「簡単な仕事ではないよ。チームを預かるには責任が伴うわけだからね。それに選手たちにも生活があって、家族がいるわけだから生半可な気持ちでは(選手と指導者を兼ねるのは)難しいんじゃないかな」と強調した。

 さらに武田氏は「本田はオーストラリアにマーキープレーヤー(年俸制限のない特別枠)として加入するわけだけど、カンボジアとともに結果が出なければ彼だけではなく、日本のイメージもよくなくなるかも。まあ何事もやる前から言うことではないが…。まずは両方とも120%で取り組んで責任を果たすことを期待したい」とした。

 一方、盟友の日本代表DF長友佑都(31=ガラタサライ)は公式ツイッターに「圭佑、自分が日本代表の選手としてカンボジア代表と対戦する時はどうする? もちろん日本代表の味方だよな?笑 わざとシュート外したりしないよな?笑」と真意を確認するような内容を書き込むと、本田もツイッターで「もちろん。笑」と答えていた。

 ただ、日本サッカー界からは2022年カタールW杯を目指す日本代表への影響を指摘する声も出ている。J1クラブの強化担当者は「本田は日本代表の選手やスタッフのことを知り尽くしているし、そういった面の“情報漏えい”は大丈夫なのか。代表監督なら本気でカンボジアを勝たせようとするはずだし…」との懸念を明かす。

 日本はロシアW杯アジア2次予選で同組となったカンボジアと2度対戦し、ともに勝利こそ収めたものの2015年11月にはアウェーで大苦戦した。成長著しい国で再び顔を合わせれば際どい勝負になる可能性もあるため、W杯出場権を争う真剣勝負となれば、日本が本田の動向に神経をとがらせるのは当然だ。

 A代表引退を示唆した本田は、東京五輪にオーバーエージ(OA)枠での参戦を目指している。ただ、五輪代表といえども森保一監督(49)らA代表も兼任するスタッフなどの内部情報が漏れる可能性は否定できない。A代表がW杯に出場するために万全を期すならば、危険分子となり得る本田は五輪代表からも“排除”せざるを得ないだろう。

 本田は「試合をやる以上は負けに行く人はいないと思うので勝ちに行く」と“ガチンコ宣言”したが、アジアのライバル国を率いる影響は自身にはね返ってくるかもしれない。