【オーストリア・ゼーフェルト3日(日本時間4日)発:日本代表ドキュメント「BLUE侍の挑戦」】「ハッ、フッ…」。練習開始の1時間半前、サッカー日本代表担当の渡辺はマウンテンバイクのペダルをこぎながらアルプス山麓のアップダウンに息を切らしていた。

 合宿初日。雄大な自然に囲まれた環境。西野朗監督(63)は63歳になった今も運動を欠かさないため「徒歩か自転車でグラウンドへ向かうはず」と考えたのだ。プロ野球・巨人担当キャップ時代に当時の原辰徳監督の練習前の散歩に同行した経験から来る勘もあった。しかし、やっとの思いで宿舎に到着するも指揮官はあっさりとワゴン車で出勤。「やるわけないでしょ」と苦笑いしながら宿舎を後にした。

 そうして迎えた練習では、いきなり実戦形式の練習などを約2時間も実施。さらに翌日の予定を急きょ2部練習に変更した。西野監督は「(19日のW杯初戦)コロンビア戦までのコンディショニング。負荷のかかるトレーニングでフィジカル的に一度上げたい」と意図を説明。練習前に行ったミーティングについても「良い意見交換ができている」と強調した。

 この日は雷雨予報だったが、最後まで快晴のもとで練習ができ、運も味方につけてきた西野ジャパン。泰然自若でチームを率いる指揮官の姿に、渡辺は本番での“奇跡”を期待せずにはいられなかった。