観音寺競輪場で〝タイムスリップ〟体験

2011年10月04日 16時35分

【白鳥幹太:ギャンブル裏街道】昨年10月、四国出張に行った際にある競輪場を訪れた。
 駅前に広がるのは田舎独特ののどかな風景。ちょうど待っていた無料バスに乗ると、運転手と顔なじみとおぼしき3人の初老のファンが、今朝は何を食べた、昨日は何のテレビを見ただの、どうでもいい会話で盛り上がっていた。
 いざ出発となる段階になり、ひとつ後ろの席からカチッと音がした。ライターで点火したかのような音に聞こえたが、まさか…。客がたばこを吸いだしたのには驚いた。
 車中禁煙が徹底しているこのご時世にまだこんな“ディープ”な世界があったとは。決して他人の煙は好きではないが、その時ばかりはなぜかピースライトの紫煙が香ばしく感じ、数十年前にタイムスリップしたかのようだった。

 ギャンブル場の多くは老朽化し施設改善もままならないところが多い。
 レトロな雰囲気を醸し出し、それをウリにしているところもあるほどだ。
 レース場によっては場内の一般スタンドの便所のほとんどが和式のところもある。若者の間では今や温水洗浄便座が施設の“付加価値”のひとつと考えられて いることを思えば、隔世の感がある。和式便所に入ってみるとその狭さに驚くこともある。作られた当時、数十年前の日本人の平均的な体格と現代人のそれが大 きく変わってきているのがこんなところからもうかがい知れる。
 場内に着き、早速車券を買い始めたが、券売機もどこか独特。銀行のATMのような作りでどこに金を入れていいのか戸惑ったのを覚えている。
 そんな田舎風情の観音寺競輪場も61年の歴史に幕を閉じ、今年度で廃止されるとの一報が入ってきた。
 ここ数年は常に噂にはなっていただけに突然の、というよりはついにその時がきたか、という思いを抱いているファンも多いはずだ。
 この先の人生、日本国内で堂々とたばこが吸えるバスに乗り合わせることはあるのだろうか…。競輪場廃止の知らせを聞いた時、まずそんな思いがよぎった。