来年に迫ったリオデジャネイロ五輪、そして2020年東京五輪でも活躍が期待される海外の自転車競技の強豪が集まった。競輪の短期登録選手制度で4~9月の約半年間、ワールドクラスの走りを披露する。主役はペルビス(フランス)だ。昨年の世界選手権(カリ)ではスプリント、ケイリン、1kmタイムトライアルの3冠、今年2月の世界選(パリ)はケイリン、1kmTTの2冠と、まさに現世界一のトラックレーサーが、躍進の原点になった日本で大暴れする。また、日本のナショナルチームも五輪に向けて、すでに勝負が始まっている。

 音速を意味する“ソニック”の異名を取るペルビスが、リオ五輪を前に日本で臨戦態勢を整える。もう1年強まで迫っている大一番を前に自国での練習、調整に集中するかと思いきや「日本の競輪に参加することで自分は強くなれた。今年もなくてはならないスケジュールだった」と短期登録で競輪に挑む。「ニッポン、スキデス!」と心からの笑顔で5回目の参加を喜んだ。

 2月に地元フランスでの世界選で2冠を獲得した。「地元で家族や友人たちの前で活躍することができ、とんでもなく素晴らしい気分だったよ」。通常は大きな大会の後は2週間ほどの休みを取るが、今回は約1か月の休暇で完全リフレッシュ。趣味の「鯉釣り」では超大物をゲットするなど公私ともにノれている。

 日本の競輪で心身を研ぎ澄まし、秋からの本格的なシーズンに臨み、リオ五輪で“神”になる。英国の伝説的存在であるクリス・ホイは2008年の北京五輪でスプリント、ケイリン、チームスプリントの3冠を達成した。ペルビスもその偉業に挑む。「ワールドカップや世界選でも勝てている。メンバーはそんなに変わらないし自信もある」。自慢の太ももは磨き込まれた65センチの超高性能エンジン。「リオ五輪での金メダル、トリプルクラウンは自分のゴール」と見据える。

 ただし、それは最終ゴールではない。「東京五輪も選手として出場したいと思っているんだ。大好きな日本の五輪開催に選手として走りたい。そこでキャリアを終えることができたら美しいと思うんだ…」。自分に成長のきっかけを与えてくれた日本に恩返しをして、競技者として幕を閉じる物語を思い描く。

 ペルビスは日本の選手にも通暁しており、3月のダービーを制した新田祐大のことも知っている。「ニッタは国際レースに出ていて、そういう大会がいい経験になったと思う。日本の競輪とは違うけどハイレベルだからね。ワタナベ(渡辺一成)もいい選手だし、相互にプラスになっていると思う」と分析した。

 ドイツの超特急・ボティシャーのスピードも必見だ。2月の世界選ではスプリントの予選でトップタイムを叩き出した。「昨年は333バンクの小田原でバンクレコードを出したね。8秒7(333バンクの日本記録)。今年も出してほしい? いや~難しいかな。ペルビスが昨年の岸和田で出した10秒3(400バンクの日本記録)はすごいよね。彼が今年も出すんじゃない」と話していたが、ボティシャーの持つスピードは“音速”にも劣らない。

 パーキンス(オーストラリア)は実に6回目の参戦。ロンドン五輪ではスプリントで銅メダルを獲得し「リオではもっといい色のメダルを、もちろん金を狙うよ」とニッコリ笑う。日本の競輪を熟知しており、選手のこと、宿舎での過ごし方もマスター。選手たちのまとめ役でもある。またパーキンスは今年で通算100勝を達成する可能性が高い。「カッコいい記念Tシャツを作るよ。クールなのをね。かめはめ波だ!」と大好きな漫画「ドラゴンボール」の必殺技で、早期のメモリアル達成をアピールした。

 ドミトリエフ(ロシア)は昨年に続いて2回目の参戦で、大ブレークに期待したい。慣れない1年目を過ごしたが大きな経験になった。「ロシアからは初めての国際競輪の参加だった。でもロシアの選手は、みんな日本の競輪に興味を持っているんだよね。だから帰ってからは、いろんな質問に答えて、競輪の伝道師になった気分だった。今年は昨年の経験を生かせるから、もっとやれるはず」と自信をみなぎらせた。

 オランダの新鋭・ブフリは今回が初めての来日で戸惑いもある。「9人だし、どういうふうになるのか分からない。一回勝てれば、それで何かをつかんでいけるかと思うので、まずはひとつ勝ちたい」と慎重だ。リオ五輪ではチームスプリントでの出場を狙っている。チームでは第3走を務めており、長く高速で踏めるのが武器だ。またケイリンにも出場できればという希望がある。今回の経験を武器に、一気に大化けする可能性もある。

 ペルビスを筆頭に、全員がリオ五輪でメダルを狙え、そして東京五輪にも出場できる力を備えている。5人はみな日本を愛し、日本のファンの前で活躍することを大きな喜びにしている。競輪だけでなく、自転車競技、五輪を巻き込んで最高潮の感動を巻き起こす。

◇プロフィル
☆フランソワ・ペルビス=1984年10月16日フランス生まれ。180センチ、86キロ。来日5回目。200メートルタイム=9秒347。ニックネーム=ソニック。14年世界選手権3冠、15年世界選手権2冠。
☆デニス・ドミトリエフ=1986年3月23日ロシア生まれ。178センチ、90キロ。来日2回目。200メートルタイム=9秒637。ニックネーム=ドミ。14年世界選手権スプリント3位、15年世界選手権スプリント2位。
☆マティエス・ブフリ=1992年12月13日オランダ生まれ。187センチ、89キロ。初来日。200メートルタイム=9秒994。ニックネーム=マッティ。14年世界選手権ケイリン3位。
☆シュテファン・ボティシャー 1992年2月1日ドイツ生まれ。184センチ、91キロ。来日2回目。200メートルタイム=9秒640。ニックネーム=ベティ。13年世界選手権スプリント優勝、14年世界選手権スプリント2位。
☆シェーン・パーキンス 1986年12月30日オーストラリア生まれ。178センチ、91キロ。来日6回目。200メートルタイム=9秒948。ニックネーム=パーコ。ロンドン五輪スプリント銅メダル。

◇5月のあっせん
・4~6日、いわき平=パーキンス
・12~14日、前橋=ボティシャー、ペルビス
・16~18日、京王閣==パーキンス、ドミトリエフ、ブフリ
・25~27日、四日市・ボティシャー、ペルビス、ブフリ