来年3月の開催をもって廃止予定となっている船橋オートレース場所属の現役オートレーサー・梅内幹雄(49)が、千葉県船橋市議会議員選挙(19日告示、26日投開票)に“電撃出馬”する。当選しても現役を続ける意向の梅内は、独自の選挙活動で「廃止撤回」を訴える意向を明かした。投票日前日には船橋オートレース場に街宣車で参戦する仰天プランも練っている。「セクシー梅内」の異名を取り、かつて女性ファンをとりこにした元選手会会長の勝算と胸中に迫った。

 現役オートレーサーである梅内が出馬の意思を固めたのは3月11日。昨年8月に突然、船橋オート廃止決定の報を聞かされてから、元選手会会長としてさまざまなジレンマを抱えたことが出馬の大きな要因となった。

 廃止決定の方針は船橋オートの施行者である千葉県と船橋市から一方的に通達され、話し合いの場を無視された経緯もある。選手会側から立て直しに向けた妥協案を提示したのが昨年6月。その2か月後に「寝耳に水」の凶報を聞いた。

「改革すべきことはいくらでもあるのに、県や市のやり方はあまりにも乱暴過ぎる。それと重要なことがひとつ。廃止の方針を打ち出してから、あれだけの敷地を跡地として何に活用するのか、市民も県民も全く知らされていないのはどう考えてもおかしい」

 船橋オートレース場はJR南船橋駅から徒歩7分。駐車場を含め約3万5000坪の広大な敷地の再利用計画が一切明らかにされていないことに、不信感を募らせる関係者やファンも多い。

 選手会では8月以降、精力的に存続署名活動を行い約12万人の賛同を得た。船橋選手会支部長の永井大介(37)らが陳情書を持って森田健作千葉県知事(65)のもとを訪れたが、門前払い。逃げ回っているようにも映る姿にもどかしさを抱えている。「市政や県政はオートレースだけじゃないのはわかっている。ただ開場以来65年間も行政のひとつとして携わってきたのに『もうやめます』『後のことはまだわからない』じゃ、あまりにも無責任で無計画。そこに一石を投じることも使命だと思っている」

 無所属新人。現職が圧倒的に有利で、取り巻く環境が厳しいのは承知している。立候補者77人で議席50を争う構図とみられるが、勝算はあると言う。

「候補(予定)者の中では一番最後に書類を提出したのが自分で77番目。オレのレーススタイルと一緒で完全に出遅れてますね(笑い)。まあ出遅れた分はこれまでのレースで磨いてきた“さばき勝負”で何とかします。政治は知識でやるもんじゃない。行動力や判断力。それらがないと務まらない」

 梅内と同じ船橋所属だけでなく、他地区の選手も好意的に受け止めているという。オート界の顔でもある川口所属の元SMAP・森且行(41)から「陰ながら応援させてもらいます」と声を掛けられたことも励みになっている。

 GIタイトルホルダーである梅内は、今月末開催のSG「第34回オールスター」(浜松)にもファン投票で選出されている人気選手でもある。ただ投票日が開催と重なるため、すでにレースの出場辞退を表明しているが、アッと驚く秘策で勝負に出る予定だ。

 投票日前日の25日は「オールスター」の初日で、船橋オートレース場でも場外発売が行われる。梅内はそこに街宣車で乗りつけ、有権者に「車券と選挙のダブル投票」を呼びかけ、オートと選挙で史上初の“ギャンブル統一地方選”を訴えるという。4年前の市議選の投票率が38%という低さだったことも憂慮しており、浮動票のカギはそこにあるとみている。

 自身の職場でもあるレース場を存続させることは市民の利益にもつながるとみている。「非開催日でもさまざまなスポーツ競技を行えるだけの施設と土地、そして役割があるし有効活用しない手はない。船橋から東京五輪に出場する選手を輩出することだって夢ではないと思いますよ」
 当選しても「現役を続ける」と言う梅内。史上初の現役オートレーサー議員誕生へ、熱気を帯びている。

☆うめない・みきお=1965年10月2日生まれ。静岡県出身。1985年、船橋オートレース場でデビュー。通算625勝、優勝回数35回。91年の川口開設記念、船橋オート祭とGI・2勝を挙げている。愛車名は「アイバーソン」「コンボガード」など趣味であるバスケット関連のものが多い。身長169センチ、体重61キロ。血液型=O。