7月に本格デビューした119期、120期(ガールズ10期)を取り上げる「challenge! 新人選手紹介」。今回紹介する窪木一茂(32=福島)はリオ五輪に出場したトラック中距離界の大エースだ。狙うはS級、そしてパリ五輪と明確。東京五輪は出場できずに、外からの観戦となった現在の思いは…。

 福島のマタドールが、革命を起こす。東京五輪を見て再度、心に火が付いた。「まだ両立はつかめてません。トレーニングが落ち着ついていない」。リオ五輪にオムニアムで出場し(14位)、その後、競輪選手の道に入った。中距離界の大エースは今、競輪選手として、また自転車競技の日本代表としての両輪で戦っている。

 7月の本格デビュー後は8連勝。中距離の実力者なので地脚があるのは当然だが、窪木の特長はタイムが出ること。瞬発力も備えているのが、強みだ。弥彦決勝で連勝は途絶え「特進したかったので残念」と悔しさを露わにした。理由は「早くS級に上がって落ち着きたかった」からだ。競輪でも上位クラスにいることが、あらゆる面で支えになる。現在はまた連勝を目指す立場になっているが、実戦経験を積むことでその道は開けるだろう。

 東京五輪の女子オムニアムでは梶原悠未(24=筑波大大学院)が、日本の女子として自転車競技界初の銀メダルを獲得した。「やってくれるんじゃないかと思ってました。パリに向けての勢いは続くと思います」。興奮しながらも、冷静に五輪という舞台を見つめ直す。

「イギリスは特にそうですが、4年間で仕上げる歴史がある。隠し持っている機材も使ってきますし。ロータスの自転車もワールドカップで1回試した後、隠していたんですよ」

 そんな世界に対し、正面から挑んでつかんだ梶原の銀メダルの価値は痛いほどわかる。「負けず嫌いなんですよね。ボクら男子と一緒になって練習しても、そうなんです」。そんな窪木も「そっち派なんですけど」と笑う。競技でも競輪でも戦闘的なスタイルが持ち味。「パリ五輪、目指します!」と敢然と宣言した。

 梶原の獲得した銀メダルの意味を胸に、まずはリオ以来の五輪出場を目指す。そして、何としてもメダル獲得へ。圧倒的に攻撃的な思いを武器に、突き進む。以下、Q&A。

――ナショナルチームの男子で気になる選手は

 窪木 短距離の人たちですね。誰が、っていうより雰囲気がすごい

――どんな雰囲気?

 窪木 バチバチなんですよ。競輪選手をやっていたら何億円と稼げる人間が、それを投げ打ってやっているわけです

――怖くない?

 窪木 いや、その雰囲気が好きなんですよ

――梶原悠未さんの強さを支えているのは

 窪木 やると言ったらやる。その決断と、実行力ですね。普段から練習もしていて、五輪ではさすがに緊張している部分も見られましたが…。素晴らしい動きでした

☆くぼき・かずしげ 1989年6月6日生まれ、32歳、福島県出身。172センチ、75・5kg。日大卒。119期に特別選抜試験で合格。師匠=須永優太(94期)。リオ五輪オムニアム14位。自転車競技トラック種目の中距離男子エリート強化指定選手「A」