ジム経営するS級戦士「高齢者にも役立つ競輪トレーニング」で地元に恩返し

2015年01月01日 14時00分

自らが考案した競輪用のハンドルを組み合わせたマシンを使う勝瀬

 鋭い追い込みを武器にGI戦線で活躍している勝瀬卓也は“認知動作型トレーニング”の「十坪(とつぼ)ジム 川崎」を経営している。寝たきり予防、認知症予防にも効果があるとされるトレーニングを広め、社会の健康増進の一翼を担っている。

 地元密着型の競輪だけに、活躍して得た資金で地元経済に貢献、恩返しをという競輪選手は多い。勝瀬は自身が出合った最高のトレーニング理論に傾倒し、ホームバンクがある川崎にジムを作った。

 認知動作型トレーニングは、小林寛道東大名誉教授によって開発された。「認知」は脳の知的な働きを意味し、脳の働きが大きく関与する「動作」を練習することから「認知動作」と名づけられている。

 勝瀬は2009年ごろからトレーニングを開始すると「1年くらいで成績が上がり始め、2年目には記念の決勝にどんどん乗れるようになっていった」。それまでは「ウエートトレーニングでより重いものを上げられるようになっても、自転車は速くならない。いろいろと練習してみても、どうしても強くなれない」と悩んでいた。自分にはこれしかない、と完全にハマった。そして13年9月GIオールスターで表彰台に上がった(3着)。

 最初は東京都世田谷区経堂にある「十坪ジム」の1号店に通っていた。だが川崎を拠点にしている勝瀬には少し遠い。「川崎にジムができないかな…」。そこで思いがけない出来事があった。小林氏の講習会が行われるということで、トレーナーたちに現役のスポーツ選手として一人交じり、泊まり込みで参加した。その宿でのこと――。「お風呂で小林先生と一緒になったんですよ。それで『川崎に作ってもらえませんか』と話したら、『勝瀬君、やりなよ』と言われて…」

 自分自身のトレーニングも目的だったが、仲間思いの勝瀬にはもう一つの狙いがあった。「ちょうどその時、競輪学校の試験になかなか合格できない弟子がいて、ダメだったらトレーナーとしてやってもらおうと思った」。その北浦和人は合格し、105期の選手として活躍を始めているが、現在「十坪ジム 川崎」では選手になれなかった2人がトレーナーとして仕事を得ている。

 今注目されているのが認知症改善に効果があるといわれている点だ。「そのうち、老人ホームとかでこの認知動作型トレーニングができるようになって、広まっていきますよ」。スポーツ選手として強くなる目的も大事だが、これからの日本の重要課題である認知症と向き合う必要性も感じている。

「普通に歩けなかった人が歩けるようになったりして『ありがとう』と言ってもらえるとうれしいんですよね」
 正しい体の動かし方を取り戻したことで、つえが必要だった高齢者が背筋を伸ばして歩けるようになったケースもあるのだ。競輪という自分の天職から、日本の、世界の課題に取り組もうとしている。

【住所】神奈川県川崎市川崎区南町16―22肥後屋ビル1F「十坪ジム 川崎」
【営業時間】月~水9・00~13・00、14・00~20・00。金14・00~20・00。土、日9・00~13・00、14・00~18・00。定休日・木曜、祝日

☆かつせ・たくや 1977年2月1日、神奈川県生まれ。84期。168センチ、71キロ。脚質・追い込み。南関ラインを大事にする熱い“仲間愛”にあふれる。厳しいメンバー構成、展開でも突っ込む脚があり、穴党に人気がある。13年9月GIオールスター決勝3着。