地元を走る山崎は鬼――。いわき平競輪開設63周年記念(GⅢ・いわき金杯争奪戦)は27日、最終日を開催した。決勝は恐ろしいほどの豪脚を発揮した山崎芳仁が突き抜けV。昨年12月伊東以来、12回目の記念優勝を手にした。 

 グランプリ王者・金子貴志の先行の前に最終BSは一本棒。いかに山崎でも厳しい展開なのは間違いなかった。

「バックで仕掛けるのは無理。金子さんは伸びていっていた。芦沢(大輔)も仕掛けない感じだったので、ためてためて、ウッ、と」。野球なら200メートル級の逆転場外サヨナラホームラン。バスケットボールなら見事過ぎる、スリーポイントのブザービーター。ファンの度肝を抜く一撃だった。

 新選手会発足の騒動で直前は練習できなかった。しかし「でもレースでは人気を背負っているし、ファンには返すしかないんで。やるしかない」と混乱を引き起こしてしまったことをひたすら反省。山崎らしい走りを見せることしか今はできない。しかも地元戦。1月の前半にしっかり練習できていた貯金を全部引きおろして力を出し切った。

 今節、気丈に報道陣に対して笑顔で振る舞った。平素と同じようにしていた。それはもちろんファンに影響を与えないため。その裏で体重は3キロ落ちていた。心優しい“山ちゃん”は、何とか競輪界全体が良くなるのなら、としか考えていない。今は処分を待つ身。とにかく走れる時は、しっかり走るだけ。競輪界とファンのために――。


【決勝VTR】佐藤友―紺野哲、金子貴―成清貴―望月裕、芦沢大―宗景祐、山崎芳―成田和で周回。山崎が赤板から動き佐藤を抑える。芦沢が山崎を叩いた上を金子が打鐘で仕掛けて先行態勢に入る。紺野が最終HSで切り替え佐藤は9番手で動けず。最終BS一本棒で金子が押し切るかに、芦沢が直線差し脚を伸ばした外を山崎が豪脚発揮で優勝。芦沢が2着。