リニューアル工事現場に潜入! “新”千葉競輪場の今…そして未来

2020年09月29日 12時41分

S級トップレーサーと支部長の二足のわらじで活躍する中村

 新しい物語の序章――。千葉県千葉市の千葉競輪場が国際規格の屋内250メートルバンクとして生まれ変わろうとしている。長走路の500メートルバンクで親しまれ、数々の激闘、歴史を刻んだ場所は一度、廃止の方向性が示された。しかし、そこから大逆転のドラマが始まった。工事が進む「(仮称)千葉公園ドーム」に緊急取材を行い、この物語の中心で動く中村浩士に秘める思いとこれからへの狙いを聞いた。

歴史の扉が開かれるのはまだ先、来年のことだ。明確な日程も決まってはいないが、完成に向かうその姿を見れば、鮮明な新世界が目に浮かぶ。「音響やライトアップ、これまでにないものができるはずです。選手なら『ここで輝きたい! ここで1着を取りたい!』と思うような」。一人の競輪選手として、また日本競輪選手会千葉支部長として、様々な面で活躍する中村浩士(42)の言葉に躍動感があふれる。

 2015年1月、千葉競輪は廃止の方向と報じられ、17年度をもってその歴史に幕を閉じようとしていた。中村は「絶対、存続!」と声を上げ、まずは「500バンクとしての存続ということが大事だったので、署名活動などをした」。選手たちが力を合わせて訴えたものの「建物の老朽化も進み、それは無理…という返答だった」と目の前が暗くなった。

 しかし、あきらめない。「そこで熊谷(俊人)千葉市長に『250バンクというのはどうだろう』と提案したところ『そんな提案だったら考えてみたい』という返事があったんです」。存続を考え、いろんな人たちと話し合いを重ねてきた。「そういう話をしている中で250バンクという提案もあったが、それを持っていくっていうのはどうだろう、と。費用面もあるし、そんな突拍子もないことって。そんな中で最後の切り札として持っていったんです」と振り返る。

「誰もが否定的でしたし、そのころは、何を夢みたいなことを言ってるんだと、自分は言われていた。でも何か切り開くものがなければ…」

 選手たちとともに立ち上がったのは千葉競輪と包括委託契約を結んでいた日本写真判定株式会社だった。「日本写真判定さんが『その建物を建てたい』と。じゃあ、選手会としても存続できるように!と」。誰も想像しなかった250メートルバンクでの競輪開催。千葉市で生まれた日本写真判定の渡辺俊太郎社長は当時「育った時は競輪のことは知らなかったが、千葉競輪の仕事をいただいて、こんないいものが千葉にあったのか、という感じだった。これを生かして千葉のために再生したい。強い選手も多いし、みなさん協力的で伝統のある競輪場。残さなくてはいけない競輪場の一つ」と語っている。つながる思いが大きな力になった。

夢物語…という気持ちはあったが、話が進み「やれる、となってきたり、やるぞという思いが伝わっていったりすると、関係団体も協力し合うようになった。選手会本部もJKAも経済産業省も一致団結して、今に至るんです」と、中村は完成を待つ“その場所”を見つめた。千葉の選手だけではなく、関係者だけでもない、未来を待つすべての人たちのためのバンクが出来上がろうとしている。

「開催が終わるたびに千葉競輪場に来て工事の進み具合を見るわけですが、こんなに変わった、こんなに変わったと、毎回見ていて楽しいです」

 もはや夢ではない。ただ存続するだけの箱でもない。現実に、競輪に新たな力を与え、美しいドラマが再び生まれる舞台になる。「現行の競輪を盛り上げるためにこの250バンクは生まれる。違う世界をつくらなければ、新規の顧客はつかめない」。現在の競輪が伝える魅力を、より大きな枠組みに広げ、根幹から競輪のイメージを再構築するためにあると主張する。

「今は、自転車を好きな人が競輪を好きっていうのではなくて、賭け事が好きな人が競輪に来るという面がある。でも自転車人口がこれだけ増えているわけです。自転車好きな人が千葉に来てくれて、楽しんでくれて、そこに賭けもついてくる、ベットもできるよ、というイメージ」

 千葉市は17年7月1日に「千葉市自転車を活用したまちづくり条例」を施行し「ちばチャリスタイル」を提唱している。このドームはその心臓であり、千葉市から世界に向けての発信拠点となる。地球規模の将来開発は、宇宙にさえ届きそうな勢い。自転車界初の挑戦はそう、スペースインベーダー。自転車の魅力は無限の広がりを持って、人々の心を“侵略”していく。

(取材協力・日本写真判定株式会社、清水建設株式会社)


★(仮称)千葉公園ドームで開催が予定される競輪は、1周250メートルの屋内木製バンクで競われる「250(にーごーまる)KEIRIN」。通常の競輪とは異なり、五輪や世界選手権などの国際ルールに基づいて行われる。1レース6人で6周(1500メートル)を走る予定だ。出場するにはライセンス登録が必要で、現役の競輪選手は講習を受け、実走を経てライセンスを得る。

★千葉競輪場メモ
【場所】千葉県千葉市中央区弁天4丁目1―1、千葉都市モノレール千葉公園駅から徒歩約2分
【開設】1949年8月31日
【所有者】千葉市
【民間委託】日本写真判定株式会社
【施行者】千葉市
【ビッグレース開催】日本選手権競輪(72年、75年、76年、81年、84年、87年、96年、2000年)、オールスター競輪(77年)