大学2年時にインカレ自転車競技1キロメートルTTのチャンピオンに輝いた野上竜太(24=岡山・115期)。タイトルを手にして競輪選手となった野上に待っていたのは競技と競輪との違い、同期の華々しい活躍への焦り、前評判の高さとの葛藤…。師匠の柏野智典の助言のもと、野上はそれらを払拭。自らの目指す道を見つけ、再び進撃態勢に入った。

 岡山工業高校から鹿屋体育大学へ進学。大学では早くから素質を発揮した。2年時に全日本大学対抗自転車競技大会(インカレ)の1キロメートルTTで優勝。インカレ連覇を目指した3年時は準優勝に終わったが、優勝は現在S級でナショナルチームにも所属している同期の小原佑太(青森)。アマチュアとはいえハイレベルな争いを繰り広げてきた。

 初優勝はデビュー4場所目の別府(1、1、1着)。順風満帆に思われるが、同時に競輪の難しさが野上を襲った。「選手になっていろいろと難しいところが見えてきました。仕事としてとらえると全然違う。競技は個人が勝てばいいので、自分の届く位置から駆ければよかったから」。個の勝負でいい競技とラインが存在する競輪。師匠の柏野も「競技と競輪の違いに戸惑っているよう」と指摘する。

 それでも昨年の秋ごろから「ラインで」という言葉を口にするようになり、野上の意識もレースぶりも変わってきた。持ち味はダッシュ。緩んだところをカマせば1着量産もたやすい。だが、ラインで勝ち上がるために自分でレースをつくり、後ろの気配も気にしながらのレースが増えた。その分、連勝しての特昇は難しくなる。野上はそれを受け入れている。

「ラインはしっかりと意識しています。確かに同期の特昇は気になるけど焦っても仕方ない。今は足踏みしてでも自分のできることを確立していきたい。師匠からもレースでしっかり学べと言われているし、じっくりでいいイメージです」

 素質について柏野は「競技で実績を挙げているし、申し分なし。練習では取鳥雄吾(S1)と遜色なく、それ以上の強さも見せる時がある。スピードだけじゃなくダッシュもあって脇本雄太や根田空史と同じタイプ」と語る。脇本、根田という競輪界を代表するスピードランナーとの対比が出てくることが野上の無限の可能性を裏付けている。例えれば、今の野上は吹きすさぶ寒風にじっと耐えている桜のつぼみのようなもの。春が来れば見事な花を咲かせるがごとく、来るべき時が来れば野上の素質も一気に開花することだろう。その時をじっと待ちたい。

 ――師匠(柏野智典)との縁は

 野上 高校(岡山工業高校)の先輩で恩師も同じです。

 ――師匠はどんな人

 野上 本当にやさしい人です。人とのかかわりを大事にしていて、自分のことをやりながら周りも見ている。ひと言で言えばすごい人です。

 ――自身のリラックス法は

 野上 海外ドラマをよく見ています。寝る前の1~2時間前ですかね。見ながら体を休めています。

☆のがみ・りゅうた=1996年2月25日、岡山県出身。昨年7月岐阜でデビュー。身長180センチ、体重83キロ。