勝利数、優勝回数、全場制覇――。デビュー以来、常に最前線で活躍し数々の記録を打ち立てているガールズケイリンのパイオニア・石井寛子。そんな彼女にも、なかなか優勝できず苦しんでいた時期があった。

 2017年前期。小林優香、児玉碧衣、高木真備さん(引退)、石井貴子(千葉)らの台頭もあって、当時〝完全優勝が当たり前〟だった寛子が決勝で勝ち切れないケースが目立った。ファンも新しいスター選手の誕生を待ち望んでいたのか、その年のオールスターファン投票で寛子はドリームレースに選ばれなかった。

 しかしこれが転機となる。アルテミス賞に選出されると、妹・貴子との初の姉妹対決が実現。妹の先行に乗る形に持ち込み、最後は番手まくりを放ち、久々に単発レースを制した。この優勝がキッカケになったのか、その後は寛子らしさを取り戻し、無事に年末のグランプリにも出場。そしてこの年、5回目の挑戦で悲願のグランプリ制覇を成し遂げたのだ。

 苦しい時期に経験した、ドリーム漏れ、初の姉妹連係、そこでの優勝――。寛子にとってあのアルテミス賞Vは大きなターニングポイントになったように思う。