7月に116期生としてデビューした伊藤のぞみ(31=北海道・116期)。異色の経歴…いや壮絶な生い立ちを経て、もはや逆境を逆境と思うこともなく、ありのままを受け入れることで自然と明るさを身につけた天性の楽天家だ。

「坂上忍の勝たせてあげたいTV~第2の人生劇的チェンジSP2019~」(日本テレビ系・3日放送)に出演し、母が借金を作って失踪、という衝撃エピソードをいきなり披露。視聴者に強烈なインパクトを与えた。

「すごい反響があって周りから心配してもらったけど私からすればごく普通なことで何を今さらって感じ。ちなみに今は兄も音信不通。あ、北海道で生きているのは分かっています。私は能天気というか気にしないタイプ。あとは根性!」と前向きでマイペース。芯が強い無類のタフネスだ。

 高校を卒業後は看護師に。しかし平凡な日々に何か物足りなさを感じていたという。「違う仕事がしたいと何となく思っていて。そんな時、知り合いに誘われて競輪場へ行ったら面白かった。興味が湧きました」

 競輪の魅力と刺激的な環境に心を奪われ、11年間勤務した病院を退職。一念発起で選手を目指した。ホームバンクの函館競輪場は「ホワイトガールズプロジェクト」というガールズ選手を養成する企画に力を入れており素人にも優しかった。

 もともとハーフマラソンに挑戦したり、ジム通いなど体を動かすことが大好きで「乗った初日にカントを登れるようになった」と自転車にも楽々と順応し、2回目の試験で日本競輪学校(現養成所)に合格した。

 セールスポイントはダッシュ力で「自分からスピードを上げるのは難しいけど人に付いていくのは得意」。8月川崎「アーバンナイトヴィーナス」では準決で敗退したものの、そつのない追走テクニックで先輩たちと渡り合っていた。

「一戦ごとにわかることがあるし次の競走に生かせるのが楽しい」と開催ごとに走れる喜びをかみ締める。辛苦を乗り越えつかんだ第2の人生は順調だ。

 ――趣味は

 伊藤 絵を描くことです。りんりん(函館競輪場のキャラクター)のイラストをいくつか描いて、競輪場のツイッターに載せてもらってます。今は新作を描いている最中。稼いだら練習着とかにイラストを使いたい。

 ――同期との関係

 伊藤 一番仲がいいのは清水彩那さん(21・静岡)。年齢は10歳以上違うのに何か合う。養成所の卒業式のあと実家に2泊させてもらってお母さんにもお世話になりました。

 ――函館の良いところ

 伊藤 やっぱり魚介類。家は漁師でした。ちなみに今はイカが不漁です。

☆いとう・のぞみ=1987年8月24日生まれ。北海道出身。116期として7月豊橋でデビュー、初戦にして決勝へと進出した。