【SGグランプリ(住之江)&GIクイーンズクライマックス(大村)カウントダウンコラム(12):注目レーサー(10)】

【GP2位=石野貴之(35=大阪・90期)】上半期を終えた段階では17年が“石野イヤー”になることは確実のように思えた。福岡オールスターを圧倒的な強さで制すると、鳴門グラチャンも予選トップ通過で優勝しSG連勝。向かうところ敵なしだったが、夏を越したところで急ブレーキがかかる。


「レースが雑になっていた。それで流れを変えようと思った住之江(9月高松宮記念)でフライングをしてしまって…。住之江はずっと(結果が)悪かったので勝負をかけようと思っていた」

 続く下関周年は準優敗退。平和島ダービーでも予選ラストのイン戦を落として予選突破はならなかった。しかしそこは数多くの修羅場をくぐったトップレーサー。切り替えも早い。蒲郡DCを圧勝し、望み得る最高の結果を出してF休み入り。消えかけていた自信もよみがえった。

「1年走っていればいいときも悪いときもあります。1か月の休みも気にしないし、休めるのはありがたい。僕、鉄砲駆けは走るんですよ(笑い)。気温が下がっても影響はない。手前の足はしっかり仕上がる。エンジン出しに不安はないです」

 グランプリは過去4回すべてファイナルに進み、準優勝2回。今度こその思いは誰よりも強い。

「もう取らなあかんかな、と思ってます。2位でいけるし、これまで優出を逃したことがないのは強みになる。優勝戦に乗っているのとそうでないのとは違いますから」

 しっかり“充電”をして臨む大一番。大阪支部に久々のタイトルをもたらし、最強を証明する。

【QC2位=遠藤エミ(29=滋賀・102期)】今年はSGに5大会出場。強敵相手にもまれたことで自身でも成長を実感できる一年となった。「これまでは気持ちだけが強くてダメだった。自分にプレッシャーを与えて空回りしていた。そんな状況ではいいことがないというのを学習した」

 元来は冬場に良績を残すことが多いが、今年に限っては序盤に事故も何度かあり、苦しい場面も多かった。修羅場をくぐり抜けてきたからこそ得られたメンタルは、今年に限らず選手にとって一生の財産といえるだろう。すでにターンスピードなど、水面で魅せる技術はもはや女子ナンバーワンのレベル。あとはいかに自分に自信を持って臨むかだ。

 大会2連覇となるGⅡレディースチャレンジC(下関)で優勝するなど、ここにきて調整面での収穫があったのも自信回復につながっている。「うまくいかないことも多かったけど最近になって何かをつかんだ感じでリズムも上がってきました。失敗もいっぱいしたのでその経験がやっと生きてきました」。節間を通じて、安定した航跡を描いた下関のVだったが、特に光ったのは出足の鋭さだった。遠藤本来のターン力を発揮できる状態になっている。

 今の遠藤はまさに“心技充実”という言葉がピッタリ。これまでレディースCやクイーンズCといったGⅠは不思議と縁遠かったが、今年のリズムなら克服可能だろう。レディースCC優勝で初日トライアル1号艇を確保した点も大きく、最高の臨戦過程でティアラ戴冠を目指す。