【ボートレース平和島GⅠ「トーキョー・ベイ・カップ」:平和島の4不思議】関東の“聖地”ともいえる平和島だけに、常連さんもそうでない方も、さまざまな疑問を感じたこともあるでしょう。あの滝は何のためにあるのか、あの噂は本当なのか、何で難解なレースが多いのか、最良のアクセスは…。そうした疑問はGⅠの前にスッキリ解消しましょう。東スポ取材班が「平和島のナゾ」を徹底調査しました。

<1:難解なレース番組編成のウラ>時にファンや記者の頭を悩ませる難解な番組が存在するのも平和島のナゾのひとつだろう。

 番組編成をサポートしている大内桂太郎審判部部長を直撃すると「難解なレースではなく、面白いレースをつくることを意識しています」とその意図を強調。さらに「いろいろな意見があると思いますが、インが逃げて3連単が600円というようなレースばかりではつまらないと私は考えます。12Rの中で『誰を買えばいいんだ』というレースがいくつかあってもいいと思うんです。例えば1号艇が堅そうだったら、4号艇にまくれそうな選手を入れるとか、2~3着はどこからでも狙えるメンバーを組んだりもします。ただSG、GⅠはある程度は人気で決まるレースが多くてもいいとは思います」と、編成上の狙いも説明していただいた。

「売り上げのこともありますし、選手やお客さまから意見やおしかりを受けることもありますので…」(大内部長)と、様々なジレンマを抱えながらも最高の番組編成を目指しているという。「難しいな」と思った際には番組編成の意図をしっかり読み取れば、舟券的中に近づけるかも。


<2:「バックの内側が伸びる」は錯覚?>「平和島のバックは内側が伸びる」。こんな格言を聞いたことがある方は多いでしょう。2014年GPでは1Mを差した6号艇の茅原悠紀がバックのインから伸びて逆転Vを飾ったことも記憶に新しい。これは本当なのだろうか?

 平和島をよく知る東京支部長・山田竜一は「ターン出口の回転の上がり方が遅いからインが回ってモタモタする。そこで後方から懐を取って差してくると、スピードが乗っているので伸びて見える」と説明する。やはり気のせいなのか。他の選手からも「最短距離を走っているだけでは」「引き波がないからそう見える」といった声が上がった。

 さらに福岡の西山貴浩は核心的に証言する。

「あれって『錯覚』だって気付いたんです。水面図を見たら1Mを回った後の対岸は思いっきり右へ向かって斜めになっている。つまり、1Mを回って対岸と平行に走ると懐が開いて内から差されやすい。だから、内が伸びて感じるんです」

 すでに選手間ではレース場の構造が生んだ“錯覚”ということで結論が出ているようです。つまり格言はウソ? 舟券を予想する上では考えなくてもよさそうだ。


<3:ベストなアクセスは?>平和島ボートの利用駅はJR大森駅、京急の平和島、大森海岸駅の3つ。果たしてベストのアクセス方法は? 本紙取材班が自らの足を使って徹底比較した。

 まずは徒歩。大森駅からレース場までは約1・7キロ。駅から第一京浜をひたすら目指し、ぶつかったところで右折。そして平和島口を左折してしばらく歩けば到着。時間は約20分かかった。途中で大森海岸駅を通過しており、同駅からは約1・1キロでおよそ12分。また平和島駅からは約1・2キロで所要時間は13分ちょっと。徒歩なら京急線の2駅が良さそうだ。

 次にファンバス(開催時の無料送迎バス)を比較。大森駅東口から出るバスは通常、1日に73本でレース場へは約5分で到着する。全ての便で経由する大森海岸駅前のバス停からの乗車も可能だ。一方、平和島駅からは1日に50本ほど運行しており、こちらは3~4分で到着する。

 運行する京浜急行バス・大森営業所の渋谷隆之助役によると「どちらの駅も日中は10分ほどの間隔で運行していますが、朝夕の乗客が増える時間帯には臨機応変に対応しています」。大森駅で待っているファンが多ければ回送のバスを活用することもあるという。この配慮はありがたい。バスは大森駅発に軍配を上げたい。

 なお両駅のファンバス運行時間は通常、午前9時35分~午後3時30分。今回のGI開催時は14日(初日)は午前8時15分~、15日(2日目)から最終日までは同55分~となっている。

ボートレース平和島の名物の滝
ボートレース平和島の名物の滝

<4:演出効果だけじゃない大滝の秘密>2M後方のピット横からレース中も大量の水が落下している名物の滝。何のために存在するのか疑問に感じた方も多いでしょう。ファンや選手の熱くなった心を落ち着かせるため? もしかしたらそういう効果もあるかもしれませんが、実は大きな役割があるのです。

 滝が流れている建物は「平和島水質管理所」で、大田区の都市基盤整備部によると、レース場が建てられた後に運河を埋め立てた際、水質の悪化を懸念して1980年3月に設置。小型の浄水場のような施設でレース場の水質を管理している。

 年間を通してボート場の底に設置した配管から毎秒0・5トンの海水をくみ上げ、3段階の滝で大量に落下させる。ここで海水中の酸素量を増やすことで良好な水質が保たれている。また気温の高い5月からの6か月間は海水のろ過も実施。くみ上げた海水を2段階のろ過装置でゴミや浮遊物質などを取り除き、海水をきれいにしてから滝に放流している。

 この作業で水質は国が定めるC海域水準以上を常に保持。魚などが生息できるレベルで、実際に水面でボラが跳んだり水鳥が飛び交っているのはよく目にする光景だ。この水準を保たなければ生態系が破壊され、水が濁ったり悪臭が漂うなどの悪影響が出る可能性があるという。そんな状態では選手もファンもレースどころではないだろう。あの滝にはそんな大事な役割がある。

 ちなみに滝がレース水面に影響を与える可能性は「全くありません」(管理所の小林稔所長)とのこと。実際、滝から水が流れる水面にはフェンスが囲ってあり、水面には小さな波も起きていない。ご心配なく。