夫婦ボートレーサー泣き笑い 力良&裕子の交換日記

【中西裕子の巻】誰しも人生の恩人・恩師はいると思いますが、今回のコラムでは私の掛け替えのない先輩・安達美帆さん(39=埼玉)を紹介したいと思います。

 埼玉支部では安達さんの後輩の女子が8年近くいませんでした。そんな中でデビューしたのが私。8年も離れた後輩に対し、安達さんは熱心に指導してくれました。

 安達さんの存在がなければ今の私はない――。そう言い切れるほど、選手としてはもちろん、私の「社会性」を磨いてくれました。安達さんをひと言で表すなら責任感の強い人。一度自分で決めたこと、人から頼まれたことは最後まで責任を持ってやり遂げる人です。おかげで私はデビュー以来、少しずつ成長できました。

 若いころの私は、しっかり考えて行動することができず、人に迷惑をかけてばかり。何度も同じ失敗をしましたが、そのたびに安達さんは諦めずに注意してくれました。

 ボートレーサーは基本的に個人事業主。おカネ(賞金)を取り合う職業なので、同業者はみんな“敵”です。誰かが稼げなくなれば、その分だけ自分の賞金が増える。誰かが困っていて助けなくたって、結局はその人が困るだけ。そんなドライな考え方もできます。周りとどう接すれば情報が入ってくるのか? どうすればレースで勝てるのか? 稼ぎたければ自分の頭で考えるのが理想です。しかし、デビューしたばかりの新人で最初からそれをできる人は見たことがありません。そんな基本的なことを一から教えてくれる存在が同支部の先輩です。安達さんは、まさに私をプロのレーサーに導いてくれた“道しるべ”なのです。

 もしもデビュー当初の私が自分の後輩だったら嫌になると思いますね(笑い)。何度教えても仕事を覚えず、できるようになって次のことを教えると、別のことを忘れたり…。時には後輩が失敗したせいで、教えた先輩が周囲から怒られるときもあります。子供が悪いことをして親の責任になるのは当たり前ですが、アカの他人のミスで自分が責められるのは何とも言えない気持ちです。「なんで私が怒られなきゃいけないんだ!」って思いますよね。

 恐らく、安達さんも私のせいで他の先輩から怒られたこともあるでしょう。それでも私を見捨てませんでした。当時の私は「怒られてばかりで嫌だな」って思っていましたが(笑い)。今では、すべてが感謝に変わっています。

 私もデビューして11年たち、自分にも後輩ができました。今となっては安達さんは何でも話せるし、冗談も受け入れてくれる先輩。怒られていた当初では考えられないくらい一緒にいて居心地がいいです(笑い)。

 出来の悪い時からずっと見守ってくれてきた安達さん。実は最近になって思ったのですが、こんなに優しい人を毎回怒らせていた私って…。昔を回想しながら反省する今日このごろです。

☆なかにし・ゆうこ=1983年12月30日生まれ。埼玉支部の94期生。2004年5月の戸田でデビュー。同年8月の平和島で初1着。夫・黄金井力良とは10年10月に結婚。11年2月に長女、14年3月に長男を出産。15年1月通算100勝を挙げた。優勝は未経験。身長161センチ。血液型=O。

<次回は夫・黄金井力良が執筆=10月15日掲載>